67「化ける」
・現代怪談話・伝聞
ある年配の主婦に聞いた話。
彼女がまだ子供だった頃―――
田舎では、まだキツネやタヌキに化かされた、
という話が生きていた。
「で、そういう事があると捕まえたり
殺そうとしたりするのよ。
牧歌的なイメージなんてありゃしない」
他のところは知らないが、誰かが化かされた、
と聞けば罠を張ったり退治しようとするのが
当たり前だったという。
そんなある時、また村が騒々しくなった。
ああ、キツネかタヌキがまた出たんだな、
と彼女は思い、恒例行事のようにただそれを
受け止め流していた。
ふと見ると、空の檻があった。
獣などを捕らえるためのものだが、中に
エサも何も無い。
どうしてこんな物があるのかと不思議に思い、
開けて中を調べてみたという。
その中は確かに獣くさい匂いがあったが、
肝心の捕らえた獲物はどこにもおらず―――
もう別の場所へ移動させたのだと思った。
「そこで出てきたんですけど、しばらくしたら
『逃げられた! 逃げられたぞ!!』って
声が聞こえてきて」
そこで彼女が、何もいなかったから檻を開けて
中を見た、と言うと、
「それが化かされるという事だ、ってすごく
怒られましてねぇ。
でも何かに化けるならともかく、透明に
なるのも化けるっていうんですか?」
そう言うと六十過ぎの彼女は、子供のように
頬を膨らませた。
ゲーセンダンジョン繁盛記】
https://kakuyomu.jp/works/16817330649291247894
【指】
https://kakuyomu.jp/works/16817330662111746914





