63「作り物」
・現代怪談話・伝聞
とある劇団員の話。
ある時代劇―――
と言っても、明治・大正時代の悲恋ものに
参加する事になった彼女は、役作りに精を
出していた。
ヒロインとまでは言わなくても、そこそこ
重要な役だったのだが……
そのヒロイン役の子が、よく手をケガする
ようになってしまった。
「練習している時によくケガしたんですよね。
小道具の扇子が物語のキーアイテムで、
それを扱うためにも、手のケガなんて
あってはいけないんですけど……」
どういうわけか、その扇子を手にすると
ささくれが刺さったり、手を動かす時に
物や壁にぶつけてしまう事が多発した。
それは小道具を扱うスタッフも同じで、
『あれは何だ』という事になり―――
知り合いのお坊さんに来てもらう事に
なったという。
扇子やそれにまつわる事をまだ説明して
いなかったのだが、お坊さんは来るや否や、
『これをどこで』と扇子を手にした。
「美術係の一人が作ったらしいんですけど、
それは手作りで、いわくつきなワケは無いと
反論したんです。でも」
お坊さんが『全部手作りか』『材料も何もかもか』
と問い詰めると、骨とう品を扱う店で買ってきた
ものに、紙を張り付けて作ったものだと明かした。
「こういうのは一度、祓っておかないと
ダメなのだと言われました。
一度人の手に渡ったものは、どんな思いが
込められているのかわからない、と」
そして安物の扇子を元に改めて作り直すと、
それ以降は何も起きなくなったという。
「後でその美術部の人に聞いてみたら、
決して安くないお金で自腹で購入していた
そうで……」
落ち着いた後、どうして自分でもあんな物を
買って作ったんでしょう、とお坊さんに相談
したところ―――
『時々ある事です』と返されたという。
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