61「強弱」
・現代怪談話・伝聞
とある販売店員の話。
「大学生時代の話になるんですけど―――」
そう彼が話し始めたのは、大学時代に仲間と共に
地元を散策していた時の事。
「旅行ってほどじゃないんですけど、まあ
適当にバカやりながら遊び回っていました」
彼の実家はそこそこ地方にあり、自然は豊富で……
小高い山があちこちにあって、少し入ればそれこそ
うっそうとした山林の中で迷ってしまうほどだった
らしい。
「まあ地元の人間であれば大丈夫ですけど。
そこである時、あまり人が入らないところまで
行った時、お酒やお菓子がお供えしてあるのを
見つけてしまったんですよ」
どのくらい前かはわからないが、恐らくそこで
誰かが死んだのは確かなのだろう。
彼らは手を合わせると、そこを後にした。
「で、ありがちな話なんですが―――
その夜、夢に幽霊みたいなのが出て来ましてね」
顔も年齢もわからず、モヤみたいなものが
自分に向かって話し掛けて来て、
幸い言葉は聞き取れたのだが、どうも供養して
欲しいとの事らしい。
「それでまあ、知り合いの寺にみんなで相談しに
行ったんですよ」
不思議な事に、一番霊感が無いと自覚している
自分だけにその夢は見る事が出来たようで、
お坊さんにそれについて聞くと、
「あー……
確かに他の者たちはそこそこ、『わかる』
ようだが……
それだけに『憑り殺してしまう』と思った
ようじゃな。
そこでほぼ何の力も無いお前さんに、
白羽の矢が立ったようじゃ」
つまり、他のみんなはなまじ霊感? が強く、
それだけに影響も大で―――
さらに供養して欲しいのは一人ではなく、
周囲を取り込んで巨大化、悪化していたらしい。
だからほぼ何も感じない自分に、供養を
頼みたいと『それ』は申し出てきたとの事。
「供養そのものは数ヶ月で済むからと……
何か釈然としませんでしたが、これも
縁だと思って引き受けました」
ただその後、そのお寺経由で高野山から
『面白いヤツがいる』とスカウトが来て―――
それを断るのが一苦労だったと、彼は苦笑した。
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