55「本物」
・現代怪談話・伝聞
とあるゲームディレクターの話。
「ディレクターと言っても、まあ何でも屋
みたいなもの。
工程管理やらスケジュール、シナリオや
スクリプト、下手をすると声優収録まで
付き合わなければならないから」
そして、何もやるのは『普通』のゲームだけ
ではない。
18禁、いわゆるエロゲーの経歴もあり、
「何でもしなければ生き残れなかったからね。
ずっと一つの場所で、安定してやっていける
技量も無かったからさ」
そこで、あるゲーム制作を手伝う事があった。
18禁だったので、当然エロ要素があるのだが、
「当時はいろいろと残虐なゲームも流行った
時期だったから。
いろいろな死に方や殺し殺されがある
ヤツでねえ」
あくまでもゲームだし……と彼は割り切って
制作していたが、やがておかしな事が起こり
始めた。
「プログラマーの家が火事になったって
連絡があった。
まあそれを皮切りに、出るわ出るわ」
メインヒロインの一人を担当していた声優が
交通事故。
それ絡みのシーンが不可になったので総取り換え。
グラフィッカーが眼病、スクリプター(簡単な
コードでゲームを組み立てる人)も身内に不幸が
起きたとかで、一時制作がストップしたという。
「でも、創作物なんですよ。
確かに因果な物を作っているという自覚は
ありましたけど、そこまで影響出るものかと。
それでまあ、気休めですけど……
実家近くのお寺に行ってみたんです」
そこで住職が話を聞いてくれたのだが、
「そのための資料をいっぱいため込んで
いるだろうって指摘されて―――
そんなのばかり集めていれば、そりゃ影響は
出るって怒られました」
実際、後でスタッフが参考資料として集めた
ものを確認したところ……
本物の事故や自殺の映像を集めたりしていた
人もいたと判明。
その後は極力、実写を避け―――
イラストやそれ系の漫画、映画などを参考に
仕上げたという。
「いくら創作物でもね。
モチーフにしているものが本物だったら、
そりゃいろいろ起きちゃうよねえ」
今はもっとネットで何でも手に入っちゃうから、
気を付けないと、と彼は仕事に戻って行った。
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