表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百怪  作者: アンミン
怪異
253/300

53「完成度」

・現代怪談話・伝聞


とある古民具を扱う人の話。


「何かの取引でね、人形作りを生業なりわいとする人に

 会いに行ったんだ」


基本、アンティークと呼ばれるものを売買して

いるので、製作者や生産者と呼ばれる人に会う事は

ほとんどない。


だから何でその人に会ったのかまでは覚えて

いないけど、と前置きした上で初老の彼は

語り始めた。


「お互いに自己紹介みたいなものから始まってね。


 それでふと、雑談の中で―――

 何に一番気を付けているか、何を重要と

 見ているか、そんな話になったんだ」


彼は『頑丈』で『安全』である事をあげた。

実際、何十年、ともすれば百年使用に耐えてきた

物もある。

扱いさえ悪くなければ、少なくとも使用者が生きて

いる間は使い続けられると。


「向こうの方はね、確か……

 『完璧にしない事』と言ってたっけな」


若いうちは精巧な、生きていると見まがうほどの

物を作ろうと努力してきた。

しかし人形作りが三十年にも達しようという時、

それを求めなくなったという。


「何でも、一歩手前で止める事にしたらしい。


 あまり完全に仕上げると、かえってまずいんだと」


その理由は? と彼は聞いた。

すると返ってきた答えは、


「いろいろなものが入るから、だと。


 人の形と書いて人形―――

 それにもともと形の無かったものが

 入りたがるんだそうだ」


だからわざと一段()として作るように

なっていった。

だが顧客の中には目ざとい人もいて、

どうしても『完璧な』ものが欲しいって

言う人もいたらしい。


「断り切れずに何体か作った事もあると

 言っていたな」


それはどうなったのか聞こうとすると、

察したのか彼は首を左右に振って、


「それ以上は聞けなかったよ」


その人形作りの人は今は米寿べいじゅを越えている

らしいが、まだ腕は健在だそうだ。



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

『百怪』は日曜日の午前1時更新です。

深夜のお供にどうぞ。


みなさまのブックマーク・評価・感想を

お待ちしております。

それが何よりのモチベーションアップとなります。


(;・∀・)カクヨムでも書いています。

こちらもよろしくお願いします。


【ゲーセンダンジョン繁盛記】

https://kakuyomu.jp/works/16817330649291247894

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ