47「知識」
・現代怪談話・伝聞
山登りが趣味の五十代の人に聞いた話。
その男性は若い頃から登山が好きで、ただ
本格的な登山だけではなく、数時間で上って
帰って来る、軽めの山歩きのような事も
していた。
「今はトレッキングって言うんですかね。
まあ、いつもいつも重たい準備するのも
しんどかったので」
その日は、ある程度平坦な道で―――
どちらかというと、ハイキングを少し
キツくしたような道程。
一人で山中を歩いていると、ふと一羽の鳥が
目に入った。
「ただ、その鳥が何ていうか……
カラスより一回り小さかったんですけど、
自分の知っている野鳥の中にいない鳥
だったので」
ムクドリやらヒヨドリやらチョウゲンボウやら、
だいたいの鳥は見分けがつくのだが、その鳥、
特にその顔はどの鳥にも該当しなかったという。
近くまで行ったが、木の枝にとまったまま
逃げもせず―――
そこで彼は、おやつにと持っていた麦チョコを
つまんで、その鳥にあげてみた。
鳥はその一粒を器用にキャッチすると、
「何かなあ、しゃべりだしたんですよ。
最初は鳴き声かな、と思ったんですけど」
最後まで聞いてみると、それは何かの文章の
一行を読んでいるような感じだったらしい。
『〇〇は~▽◇に××で……』
『▲△は~◎●すると※に……』
そう、一粒渡す毎にしゃべり、面白くなって
ついつい持っていた麦チョコを全部上げて
しまった。
すると、もらえるエサが無くなった事に
気付いたのか―――
その鳥は羽ばたいてどこかへ消えてしまった
という。
「あれは確かに言葉でした。
よく聞き取れなかったので、意味は
わかりませんでしたけど。
ただ、わからなくて良かったのではないかと、
今ではそう思っています」
そう言うと、彼はシワが深くなった
目尻を曲げた。
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
『百怪』は日曜日の午前1時更新です。
深夜のお供にどうぞ。
みなさまのブックマーク・評価・感想を
お待ちしております。
それが何よりのモチベーションアップとなります。
(;・∀・)カクヨムでも書いています。
こちらもよろしくお願いします。
【ゲーセンダンジョン繁盛記】
https://kakuyomu.jp/works/16817330649291247894





