43「マネージャー」
・現代怪談話・伝聞
とあるアラサーの芸人の話。
今はもう辞めてしまったそうだが、ショーや
デパートなどで一芸を披露していたらしい。
「今、中抜きとか話題になっているけどね。
あの業界はそれが当たり前だった」
あるプロダクションに、こういう芸人は
いませんか? という話が来ると、
いなくても『いるいる』と言って仕事を
受けるのだという。
「それから他のプロダクションに声をかけるんだ。
自分よりも下のところへね。
で、そこも『いるいる』って答える。
どんどん下のプロダクションに話が行って……
それで最初の依頼料100万が、実際にやる人に
渡る頃には数万円、って事もあった」
元受けと下請けの力関係は絶対であり―――
『次も仕事が欲しければ』と、耐えるのが
当たり前であったらしい。
「金だけならまだいいんだけど、失敗とかも
全部押し付けられちゃう事もある」
ある時、知り合いが依頼主に会ってしまった
事があった。
『〇〇プロダクション』から直接来た事に
なっているので、本来なら直に依頼主に
会うのはタブー中のタブー。
一言、挨拶するのも許されない。
しかしそれは、スケジュール役として来ていた
マネージャーの仕事であり、その段取りが
悪かったために起きた事。
だがその時のマネージャーは芸人に全て責任を
押し付け、自分の失敗を無かった事にしたという。
「まあそれでその子、干されちゃって……
田舎に帰っちゃったんだけど」
その後、『要領が良かった』そのマネージャーは
段々と頭角を現し―――
ある大物芸人の担当になるチャンスが巡ってきた。
ところが顔合わせをする日に限って、
電車が遅延したり、渋滞が起きたり……
果ては目的地のビルに到着したら、今度は
エレベーターが止まったりしたという。
その大物芸人はマネージャーと会うと、
遅刻を責めたりはしなかったが、
「お前さん、この業界長くやっていきたきゃ、
人蹴落とすだけじゃダメだよ。
何で出世しているヤツがそこそこ後輩とかの
面倒見がいいのか、考えた方がいい」
最後にボソッと、『手遅れかも知れんが』と
付け加えられ―――
結局担当になる話は流れてしまい、そこから
どんどん仕事巡りが悪くなっていった。
最終的には地方巡りの仕事すら来なくなり、
故郷に戻ったという。
「人の欲を元にしているような商売だからねえ。
因果だって、他の業種よりはそりゃ巡る
だろうさ」
今の彼は、ビジネスではなくボランティアで
芸を披露しているという。
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