41「格闘」
・現代怪談話・伝聞
ある格闘技を学んでいる、今年アラフォーになる
男性から聞いた話。
「格闘技と言いましても、まあこちらは
武術の方ですね。
基本、ただの手段、術としか見ていないのが
武術で―――
道やそれなりの戒め、ルールを定めているのが
武道になります」
すでに師範代代理を務めるような年齢の彼は、
温厚な話し方だが、
「まあでも、こういうのをやっている人って、
多かれ少なかれ好戦的だと思います。
戦闘本能が高いと言いますか」
そこでコホン、と咳払いして、
「ですが、その分―――
怖い話や幽霊に弱いと思います。
僕もそうですけど。
生きている人間には強い分、そっちは
ダメって人、多いですよ」
そんな彼も、一度だけ……
不思議な体験をした事があったのだという。
「夜中、知人の田舎をたずねた事があって。
山道というか野道を歩いていたんですけど」
そこへ、ふらりと時代劇から抜け出たような
男が現れた。
男は『あの村の縁者か』『親戚か』、
みたいな事を話していたが―――
あまりに古風な喋り方だったので、彼もよく
聞き取れない。
それに業を煮やしたのか、突然襲い掛かって
きたのだという。
「いやまあ、びっくりしました。
だって、腕が伸びたりするんですから」
自分も武術家のはしくれ、リーチの長さとかは
わかるはずなのだが……
どう考えても異常過ぎるほど伸びてくる。
打撃じゃ埒が明かない、そう思った彼は、
関節技へと移行。
片腕の先を取り、逆関節へと極めたという。
するとその途端、その幽霊だか化け物は消えて
しまい……
そのまま知人の家に行った。
「そこで、僕の身に起きた事を話したん
ですけど……
何でもこの村で昔、騙し討ちにあった人がいて、
すごく恨んでいて今でも出るそうなんです。
僕が村の関係者だと思って、襲ってきたんじゃ
ないかって」
彼の知人もまた同門で、格闘家ではあったが、
その幽霊( ? )に関節技を極めたと言うと、
ポカンとしていたという。
「ある意味、いきなり襲ってきたんで助かったと
言いますか……
『うらめしや~』って来られたら、
戦うどころじゃなかったと思います」
人間離れしたのなら、関節も人間離れしておけば
良かっただろうになあ、そう言って彼は苦笑した。
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