40「予知」
・予言について
お寺で修行している知り合いの話。
ある時、知人の師匠の方から、彼と同僚に
話をする事があった。
「ちっと相談を受けたんだがよ」
そう話し始めたところによると―――
相談者の親戚に、子供の頃からやや知的障害のある
男性がおり、時々何かわけのわからない事を周囲に
つぶやいていたという。
「まあそれだけで、別に暴力を振るうとか
害を成すとか、そういう事はなかった
そうなんだが」
言っている事も意味不明の単語の羅列、という
ものではなく……
文章としては成立しているが、何を指しているのか
わからないもの、という扱いだったらしい。
「どういうものだったんですか?」
知り合いが聞くと、
『骨を食うな。脳がスカスカになるぞ』
『早く結婚しろ。みんな結婚しなくなる』
『土地も建物もしばらく買うな。どうせみんな
流される』
と、後から考えてみれば……
と思う事ばかり言っていたという。
「三十年以上前の話らしいんだがな。
今じゃソイツもすっかりアラフィフのオッサンに
なったらしいが」
「でも、それってすごい事じゃないですか?
今からでもその人の話を参考にすれば―――」
同僚の一人がそう話すと、師は首を左右に振って、
「ただ、他にもいろいろ言っていたようで、
そっちは本当に意味不明なんだと。
適当に言ってたら、後でいくつか当たって
いるものもあるだろうし、それに時期を
言い当てているものも無い。
まあ俺は偶然だと思っているけどよ」
師匠の言葉に、彼と同僚たちは半ば納得した
面持ちになったが、
「まあそれとも……
他の意味不明の事は、まだ当たっていない
だけかもな」
そうカラカラと笑う坊主に、弟子たちは苦笑で
返したという。
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