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百怪  作者: アンミン
怪異
234/300

34「誘い」

・死者との交流について


お寺で修行している知り合いの話。


供養や墓参りなどといったものは、基本的には

ご先祖様に対する儀式であり礼節だが―――


「でもご先祖様って、一番心霊や怪談では

 見ない存在ですよね」


彼がそう話題を同僚たちに振ると、

『身内だし』、『恨まれてもいないし』と

意見を出し合っていると、


「そりゃよっぽどヤバい事でも無ければ、

 来る用はないだろう」


話に入ってきた師によると……

そもそもは子孫を見守っている立場であり、

しょっちゅうあの世からこの世へ来る存在でも

ない、という事らしい。


「警察だって警備会社だって何かありゃ来るけど、

 何も無ければスタンバイしているだろ?」


その例えに彼らは苦笑したが―――

では、よっぽどでも無い限り現れないのか、

と誰かが疑問を口にすると、


「ん~……

 俺の場合、一度だけ?

 ヘンな事があったな」


そう言って師が話し始めたところによると、

彼がまだ小学校高学年だった頃―――

父親の知り合いの別荘を、一時的に貸してもらう

機会があった。


家族全員でその別荘へ行ったのだが、

着いた直後から師は熱を出してしまい……

薬やら飲み物やら買いに、みんな出かけて

しまったという。


少年だった師は一人寝ていると、

ざわざわと気配がした。

どうも自分の周囲にたくさんの人が来ている

ようだった。


『一人か?』『留守番か?』『病気?』

『大丈夫か?』『えらいな』

と、子供である自分を心配するような言葉を

次々とかけられ、


自分は寝ているはずなのに周囲の景色が見え、

そこには洋服ではなく、時代劇のような和装に

身を包んだ人たちがいたという。


「おじさんたちは?」


『ああ、親戚だよ』『そうそう』


彼の質問に彼らは事も無げに答える。

そして続けて、


『〇〇のところのか』『どうだ?』

『いやダメだろう』『やめとけって』

と、何やら揉めているような会話となり、


『坊やはこっちに来たい?』


という質問が来たので、


「お母さんに聞いてみないと……」


そう答えると、


『ほら』『ダメだろうそりゃ』『まったく』

と、呆れるような言葉が次々と出てきた。


そこで一気に眠気が襲ってきて、師は眠って

しまったという。


その後、薬局から薬を買ってきた家族により、

普通に完治。

熱も別にそれほど高かったわけではなく、

死にかけたとか危なかったとか、そういう事も

一切無かった。


「まあ今思えば、誰かが『連れて行こう』と

 したんだろうが―――

 そんな事、ガキに簡単に聞くんじゃねえって」


あっちに行ったらまずそいつをブン殴ってやる、

そう師は息巻いた。


( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

『百怪』は日曜日の午前1時更新です。

深夜のお供にどうぞ。


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