33「変化」
・現代怪談話・伝聞
とあるアラフォーの会社員の話。
彼は若い頃、その会社で営業マンをしていた。
と言っても飛び込み営業ではなく、会社がある程度
セッティングをし、そこへのプレゼンを任される。
ある意味、商品や企画の説明役のようなものだった
という。
そのため日本全国を飛び回り―――
それこそ『やり手』の社員は、一ヶ月に7,8回ほど
地方へ出張する事になる。
「自分はそこまでじゃなかったんですけど、
それでも月に4,5回くらいはあったかな」
行先で泊る事も多く、仕事が終われば勤務時間後は
『自由時間』。
中にはその地で、『夜の店』に出かける猛者もいた
らしいが、
「もちろん、自分にそんな度胸は無かったですよ。
行先のお店で、契約先の方と出会う可能性もある
わけですし」
ただ一度だけ、誘われるがままにして―――
そういうお店に入ってしまった事があるという。
普段であれば、そういうお誘いには絶対
乗らないのだが、なぜか一人の女性に呼ばれ、
ふらふらと入店。
そこでしばらく、お酒や話を楽しんでいたが、
「私を呼んだ女性が……
何か喉につまったかのように、ケッケッ、
と息苦しそうにせきこみ始めたんです」
やがて彼女は、ペッ、と大きな毛玉のような
物を吐き出した。
いったいこれは? と思っていると―――
顔を上げた彼の前に、十匹以上の猫が座っており、
さらにそこは外で、どこかの大きな空き地に
いたという。
茫然としていると、猫たちはサーッと逃げ出し、
彼も弾かれたように、近くの明かり目指して
走り出した。
そこから泊っていたホテルまでなんとか戻った
という。
「狐や狸ならともかく……
猫に騙されるなんてねえ。
まあ、猫も化けるって言いますけど」
その女性に誘われたのは、四国のとある大きな
アーケード街だったそうだ。
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