28「双子」
・伝統に対する対処について
お寺で修行している知り合いの話。
今では迷信の類だが、日本のみならず
世界中で、双子を忌避する風習があった。
医学的には何の問題も無い事なのだが、
当時はそういう事を信じてしまう背景があり、
その事に対する差別も多かったという。
「いつ頃―――
というのはわからないけど、そういう迷信は
どうやって減ったんでしょうね」
もちろん今ではそんな事はなく、むしろ少子化の
このご時世では喜ばしい事だろう。
彼の話に、「近代化」や「合理的精神の発達」等、
同僚からいろいろと意見が上がったが、
「対応というか、儀式みたいなモンは
江戸時代にはあったと聞くが」
そう言いながら師が入ってきた。
何でもそういう事は世継ぎ問題に直結し、
特に侍階級では大問題で―――
『どちらが先?』と後々騒動になる可能性が
あった。
「何をするんですか?」
彼が師に問うと、
「まあ、片方を捨てるんだよ。
1人だけ産まれたって事にしてな。
ただあくまでもこれは儀式的なモンで、
部下に捨てに行かせるんだ」
そしてその後、『偶然』その子を双子の親が
発見する。
ちょうどこちらも子供が産まれたし、
一人育てるのも二人育てるのも同じだろう―――
そう言って『拾う』のだという。
「何て言うか、茶番だけどな。
もちろん周囲の人々もわかっていただろうし。
でもそれで何も起きないってわかれば、
意味が無いものとして段々と廃れていったん
だろうよ」
そうしなければ、とにかく年寄りや保守的な考えの
連中は、納得しなかっただろうしな―――
そう言って師は話をしめくくった。
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