25「遠慮」
・現代怪談話・伝聞
飲食店を営む人の話。
彼はとある地方に住んでいたが、田舎ぐるみで
お盆や正月を迎える風習で―――
墓参りになると、そこら一体総出でそれを
行うのだという。
墓の中にはごくわずかだが無縁仏もあり、
それらの面倒も田舎ぐるみで見ていたらしいが、
昔は余裕が無かったのか、無縁仏のお墓に
供えるのは水だけだったという。
しかし時代が経つにつれ、段々と生活水準も
上がってきて―――
無縁仏のお墓にもお酒が供えられるように
なった。
安酒だが、喜んでくれるだろう……
そう思っていた彼のもとへその晩、無縁仏の
霊と思われる者が夢に出て来た。
「あの、お水で大丈夫です……」
それ以来、彼はお酒を供えるのを止めると、
夢には出て来なくなった。
ただ時々うっかりお酒を出すと、また夢に
出てくるのだという。
「ありゃあ、遠慮していたのか―――
それとも単に下戸だったのか……
どっちなんでしょうねえ」
そう言うと、初老の彼は頭をかいた。
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