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百怪  作者: アンミン
怪異
216/300

16「証拠」

・確認出来る伝承について。

お寺で修行している知り合いの話。


よく、狐や狸に化かされるという話があるが、

たいていそれは、食べ物やお風呂、またはお土産が

枯れ葉だったり土だったりする。


酷いものになると肥溜めに落とされる、という

ケースもあるようだが、


「でも食べたり飲んだりした場合―――

 こう言っちゃなんですけど、証拠は

 ありませんよね?」


昔は何でもそうやって、狐狸こりのせいにして

いたのでは、と同僚がみんなと話していたところ、


「まあ記録でも残ってなけりゃ、そんなモン

 検証も出来ないだろうからな。


 残っている場合もあるっちゃあるんだが」


と、師が会話に入ってきた。


「……記録が残っている場合―――

 そんな事あるんですか?」


彼が師に反問するように問うと、


「ここじゃねえ―――

 別の寺に残っていた話だが」


昔、とても話の上手い男がおり……

宴会や催しなどで、引く手あまただったという。


ある時その男が、お寺で坊さんのお話の前座に、

何か軽い話でもしてくれと頼まれた。


普段お世話になっているお寺だったので、

彼は快く了承し……

話が終わると、そこで出された酒や食事を

たらふく飲み食いしたという。


そしてそのまま寝てしまい―――

朝、そこの寺で住職に起こされた彼は、

『何をしているんだ?』と問い質された。


「お決まりのパターンだが、坊さんの前座など、

 寺の誰も頼んでいなかったっていうんだな。


 それどころか、住職ほかお寺の人間は、

 法事で出かけていて……

 その日は全員留守にしていたらしい」


さては化かされたか、昨夜飲み食いしたアレは、

馬のフンかそれとも―――

と青ざめていると、


「そこで、近くの酒蔵で宴会をする予定が

 あったんだが、料理や酒がいつの間にか

 消えてしまった事があったと、後で

 わかったらしい」


全てではないにしろ、結構な量が消えてしまった

らしく……

お寺でお膳や食器を確認すると、酒蔵から

消えたものだと判明した。


お寺が盗みを働くはずも無いし、その男一人で

持っていける量でも無し―――


結局、狐や狸がその男の話を聞きたくて、

用意したものであろう、という事になり、


だから飲み食いしたのはちゃんとした酒や

料理だったのだろう、という事で落ち着いた。


「その人もホッとしたでしょうねえ」


そう彼が感想を述べると、


「ああ。で、その体験談を自分の話に加えて、

 ますます人気が出たらしい」


転んでもただでは起きぬ、とはこの事だ、

そう言って初老の坊主はカラカラと笑った。



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

『百怪』は日曜日の午前1時更新です。

深夜のお供にどうぞ。


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