15「意識」
・現代怪談話・伝聞
とある大学生の話。
彼はフィールドワークを課題に出され―――
その題材に、地元の山を選んだという。
そこで、山で狩猟をしていた初老の男性に
道案内を頼み、その山についていろいろと
説明してもらった。
彼はもう引退しているが、ここで獲物が獲れた、
そこはよくイノシシが出たと、懐かしそうに
語ってくれたという。
そんな彼がある場所に来た時、急に立ち止まって
先の窪みを指差し、
「あそこから先は、山の主が住んでいる。
特にあの窪みは、絶対近付いちゃならねえ」
その直径3メートルほどの窪みを見て、
彼はふと口を開き、
「ああ、確かにあそこなら―――
卵を産みやすそうですものね」
「……卵?」
怪訝な顔をして、案内人が聞き返した。
「え? だって蛇は卵を産むでしょう?」
「俺は、山の主が蛇だなんて―――
一言も言ってないぞ?」
彼らはそのまましばらく無言でいたが、
案内人の方から沈黙を破り、
「……帰るぞ」
それからすぐ下山し、その間彼らはほとんど
口を聞かなかったという。
「何で山の主が蛇だと思ったんだろうなあ」
彼自身、未だにわからないという。
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