表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百怪  作者: アンミン
怪異
214/300

14「記憶」

・記録や思い出について


お寺で修行している知り合いの話。


座敷童ざしきわらし、という妖怪がいる。

いつの間にか子供たちに混じり、遊んでいる時は

みんな知っているはずなのに―――

いなくなると途端に存在が不明瞭ふめいりょうになる。


「いわゆる、イマジナリーフレンドとかいう

 ヤツなんですかね」


彼が同僚たちと意見を交わす。


イマジナリーフレンドというのは、幼少期に子供が

架空で作る友だちの事で……

また同調圧力も加わって、共同でそういうものを

意識してしまうのでは、と意見を交わしていた。


「座敷童、か」


そこへ師が入ってきたので、彼にも質問してみた。


「子供の時だけ見える存在、というのは

 ポピュラーなんだろうが」


そう言うと師は話し始めた。


何でも、他の僧侶仲間から―――

とある相談を受けたのだという。


「その親戚にゃ、一人……

 人気者のオジサンがいたらしいんだがよ」


子供の頃から明るく、ひょうきんで―――

人を笑わせるのが好きだったらしい。

そして周囲からも好かれていたという。


その人が死んだ時は、親戚一同肩を落とし、

盛大に葬式を執り行った。


「で、当然墓も建てたんだが」


その墓が無いのだという。

いや、墓が見当たらないだけではなく、

そのオジサンの名前まで、思い出せないと

いうのだ。


「何でも、そいつの寺で墓を建てたと

 言っていたらしいんだが―――


 記録にねぇんだとよ。

 檀家だんかだから、絶対にそれは残っている

 はずなのに」


また、各自それぞれそのオジサンの写真やら

映像やら、痕跡を探したそうだが……

何も残っていなかったそうだ。


「それはいったい……」


さすがに知人や同僚は、言葉が見つからないで

いたそうだが、


「さてなぁ。

 集団幻覚とか、共同幻想とか―――

 まあいろいろ説明しようと思えばつけられるん

 だろうが」


そこで師は一息ついて、


「長生きした座敷童でも、いたんじゃねぇかなあ」


そう言って師はカラカラと笑ったという。


( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

『百怪』は日曜日の午前1時更新です。

深夜のお供にどうぞ。


みなさまのブックマーク・評価・感想を

お待ちしております。

それが何よりのモチベーションアップとなります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ