14「記憶」
・記録や思い出について
お寺で修行している知り合いの話。
座敷童、という妖怪がいる。
いつの間にか子供たちに混じり、遊んでいる時は
みんな知っているはずなのに―――
いなくなると途端に存在が不明瞭になる。
「いわゆる、イマジナリーフレンドとかいう
ヤツなんですかね」
彼が同僚たちと意見を交わす。
イマジナリーフレンドというのは、幼少期に子供が
架空で作る友だちの事で……
また同調圧力も加わって、共同でそういうものを
意識してしまうのでは、と意見を交わしていた。
「座敷童、か」
そこへ師が入ってきたので、彼にも質問してみた。
「子供の時だけ見える存在、というのは
ポピュラーなんだろうが」
そう言うと師は話し始めた。
何でも、他の僧侶仲間から―――
とある相談を受けたのだという。
「その親戚にゃ、一人……
人気者のオジサンがいたらしいんだがよ」
子供の頃から明るく、ひょうきんで―――
人を笑わせるのが好きだったらしい。
そして周囲からも好かれていたという。
その人が死んだ時は、親戚一同肩を落とし、
盛大に葬式を執り行った。
「で、当然墓も建てたんだが」
その墓が無いのだという。
いや、墓が見当たらないだけではなく、
そのオジサンの名前まで、思い出せないと
いうのだ。
「何でも、そいつの寺で墓を建てたと
言っていたらしいんだが―――
記録にねぇんだとよ。
檀家だから、絶対にそれは残っている
はずなのに」
また、各自それぞれそのオジサンの写真やら
映像やら、痕跡を探したそうだが……
何も残っていなかったそうだ。
「それはいったい……」
さすがに知人や同僚は、言葉が見つからないで
いたそうだが、
「さてなぁ。
集団幻覚とか、共同幻想とか―――
まあいろいろ説明しようと思えばつけられるん
だろうが」
そこで師は一息ついて、
「長生きした座敷童でも、いたんじゃねぇかなあ」
そう言って師はカラカラと笑ったという。
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