13「名前」
・現代怪談話・伝聞
とある脚本家から聞いた話。
彼がまだ駆け出しだった頃、仕事絡みでこんな事が
あったらしい。
「他の人がやっていた仕事が―――
締め切りが守れなくて、その完成まで
ピンチヒッターとして頼む、という事が
よくあってね」
途中まで出来ていた台本や脚本を、何とか
完成まで書くのだという。
とは言え、プロットなど無い人も多く、
また登場人物の名前すら決まっていない事も
ザラにあった。
「そういう場合は、適当に何でもいいから
こっちで考えてくれと。
向こうも時間は無いし―――
ノークレームノーリターンって感じで」
そんな仕事を終えたある時、先方から
問い合わせの電話があった。
「何かヘンな事でもあったかな?
と思って聞いてみたんですけど」
何事かと思って詳しく聞いてみると、
クレームではないのだが……
何でも、その劇の登場人物の名前が―――
役者の誰かの母親だったり、恋人だったりして、
やりにくいというものだった。
「登場人物が7、8人程度の劇だったんですけど、
1人や2人ではなく全員……って言われると。
そもそも自分は急遽完成させるために
入ったんで―――
ろくに配役も知らなかったんですよ」
さすがにストーリー自体は関係無かったそうだが、
名前を変更してもいいか、という事で連絡して
きたのだそうだ。
「全くの偶然だったんですけどねえ」
そう言って彼は首を傾げた。
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