11「入れ墨」
・現代怪談話・伝聞
とある中堅会社に勤めるOLの話。
今年で二十代後半になる彼女は、これまでに
何度か恋人が出来た事があった。
学生から社会人に至るまで―――
相手が転校したり、また仕事の都合でなかなか
会えなくなったりで別れてきたが、彼らには
ある共通点があった。
「初恋は高校生の時だったんですけど……」
二人でプールに出かけた時、その彼氏の背中に
入れ墨のような物が見えたという。
もちろん高校生にそんな物があるはずもない。
それはすぐに見えなくなったが―――
彼の背中を見る機会に、着衣の有無に関係なく
その入れ墨が見える事があった。
二人目は社会人になってからすぐに出来た
職場の先輩で……
その彼氏の背中にも、入れ墨が見える事が
多々あったという。
「初恋の人を合わせて、今まで5人ほど
付き合ってきたんですけど―――
その背中に入れ墨が見えるんですよね。
別に極道な人が好きというわけでも
無いんですけど」
そんな折、五人目の彼氏と一緒に東京のある
魚河岸を歩いていた時……
『あ』と、記憶というか過去の映像が頭に
流れ込んできた。
元々、昔の漁師や船乗りたちは、『彫り物』を
背中に入れる事が多かったという。
それは、いざという時の身元確認のため―――
顔や体がどうなっても、背中のそれで識別する
ためだと。
当然、彼らの妻や恋人、または相手をしている
女性は、その事を知っているわけで……
「未だに『そういう』人を追っかけて
いるんですかね、私」
中堅どころに勤めるキャリアウーマンは、
そう言って苦笑した。
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