94「諱」
・本名について
お寺で修行している知り合いの話。
真名という言葉がある。
仮名における漢字書きという意味で、または
実名・本名を表す場合もあるのだが―――
「よく物語とかで、本名を知られると正体を
見破られてしまう人外とか、または本名を
取り戻す事で実力を発揮する設定とかあるけど」
彼は同僚とその事で意見を交わし合い―――
どういう仕組みなのだろうか?
という疑問が出てきた時、ちょうど師匠がそこへ
通りかかった。
彼らは師にもその話をしてみたところ、
「諱という言葉があるが」
諱=いみな、と読むのだが、身分の高い人の名前を
直接呼ぶのを敬遠したり―――
または死者の名前を忌避したりする風習があった。
名前は本来、その人物の人格や魂に直結しており、
それを口にするという事は、人格を支配出来ると
考えられていたらしい。
「だからネガティブなイメージが強い。
言うほどまあ悪くは無いが、マナーとか
ルールとかの問題だけどな」
そこで彼は、よく物語の中で人外や化け物といった
存在にも適用されるが、と師に問うと
「ヨーロッパの妖精も、自分の名前や素性を
明かされるのを嫌うと聞いた事はある。
直にフェアリーと呼ぶと、痺れさせられて
しまうんだとか」
だからその場合は妖精とは呼ばず、
善良な隣人とか、平和を好む人とか―――
そういう別称で呼ぶのだという。
そこで空気の読めない一番若い弟子が、
「真名ってしんめい、とは読まないんですか?」
元ネタを知っている同僚たちの顔色が
サッと変わったが、
「そういう読み方はしねぇぞ。
そりゃゲームとかだろ」
あっさりと返され、全員がガクッと肩を
落としたという。
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
『百怪』は日曜日の午前1時更新です。
深夜のお供にどうぞ。
みなさまのブックマーク・評価・感想を
お待ちしております。
それが何よりのモチベーションアップとなります。





