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百怪  作者: アンミン
闇語り
181/300

81「先入観」

・それぞれが持つ印象について


お寺で修行している知り合いの話。


日本の幽霊は足が無い、というのが一般的な

イメージだが―――


海外だと、ゴーストというものは基本的に

足はある。


「認識や価値観は共通性があるとしても……

 見た目の違いってどうして出るんですかね」


彼が話を振ると、外国人が日本に来て幽霊を

見るとどうなるだろう? とか、その逆は―――

という具合で意見が飛び交った。


そこへ師が入ってきて、その事について

見解を求めると、


「それも先入観というか、それまでの知識に

 よるものじゃねえかなあ。


 海外の心霊映像とか見ても―――

 足先までピッタリある幽霊って、あまり

 見た事ねぇだろ?」


下半身は輪郭りんかくがぼやけていたり、または

影だけだったりと、ハッキリと映っている例は

確かに少ない。


「ほとんどは作り物だろうし―――

 そういうのが作られるって事は、あちらも

 『ハッキリとは見えないもの』という先入観が

 あるって事だろ」


全員が『それもそうか』という表情になると、


「まあ実際、この世のものではない事なんて、

 確認のしようもないわけだが。


 思っていたのと違う、という例もあるし」


そう言って師匠が話し始めたところによると……


師匠の修行仲間の話らしいのだが、『鬼が出る』

という山にこもっていた事があるらしい。


鬼などいない、いるのであれば見てやるという

一心で、山籠やまごもりをしていたが―――

一度だけ、不思議な体験をしたという。


ある夜、彼が寝ていると笛の音が聞こえ……

それは昔の笛の音で、その元をたどっていくと

神楽かぐらの衣装を着た女性がいた。


彼女は両目を閉じ、笛を吹き続けていたが、

彼はなぜかその光景から目を離せず―――

『こんな夜中に……

山奥に一人、女性がいるはずがない』

そう正気に戻った彼は、一目散にその場を

離れたという。


その後、ふもとの老人に体験した事を

話す機会があったのだが、


「見つからなくて良かった。

 それこそが鬼じゃ。


 気付かれたら、命はありませんでしたぞ」


そう聞いた時は、さすがにゾッとしたとの事。


「その女が鬼だったという事ですか」


確かにイメージとは異なるよな、そう彼と同僚が

話していると、


「いや、コレはアイツが不勉強なだけだ。


 渡辺綱わたなべのつなが女に化けた鬼の腕を切り落とし、

 それを乳母に化けた鬼が取り返しに来た……


 結構有名な話だと思うんだがなあ」


いつの話ですか? と聞く彼に、平安時代と

答えた師匠は、からかうように笑ったという。



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

『百怪』は日曜日の午前1時更新です。

深夜のお供にどうぞ。

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