80「行き止まり」【挿絵あり】
・地形と対応について
お寺で修行している知り合いの話。
彼が自動車である田舎の山道を走っていたところ、
脇に入っていく道が見えた。
ただ、それがどうにも妙で―――
それまで一直線になっていた道が、やや
カーブするような感じに曲がっていたのだという。
「アスファルトで整備された道路ならあんまり
見ないですけど……
土の地面ではまあ、珍しくはないですよね」
ただの雑談で出た言葉だったが、そこで
話が耳に入ってきたのであろう師が、会話に
参加してきた。
「技術的な事もあるだろうが……
昔の道路や脇道っていうのは、直線では
作っていないところが多いぞ」
それはまたどうして? と彼と同僚が
興味を示すと、
「以前、十字路とか衢の話をした事があったろ。
(闇語り61話「共通性」参照)
地形には何らかの力の流れとか、制御とか
出来ると考えられていたんだ。
特に一直線の果ての行き止まりの場所は、
良くない物が溜まると言われていてな。
だからあえてカーブさせているところもある」
通り抜けるのならいいのだが、行き止まりに
してしまうと、そこで何もかも止まってしまう。
特に直線が長ければ長いほど、最終的に
ぶつかる場所も『悪くなる』のだという。
「でも、コンクリートやアスファルトを
使うくらいになれば―――
そうする必要は無いでしょう」
彼が話を切り替えると、
「今でもカーブをかけるところはあるぞ?」
師の返答に、全員が聞き耳を立てる。
彼らの師は続けて、
「地下鉄とかトンネルとか―――
地上に出る時にわざと曲げている。
古い、戦前のタイプだと特にな」
「それは……
呪いとか迷信とかを恐れてですか?」
彼が聞き返すと、師は首を左右に振り、
「あの時代のは、戦争前提だからな。
爆風を軽減する作りにしているんだ。
だから一直線ではなく、勢いを殺す作りに
なっている」
物理と非科学的な考えの奇妙な相似に、
部屋にいた全員が考え込んだ。
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