76「性別」
・人外の異性について
お寺で修行している知り合いの話。
江戸時代にはたくさんの怪談本や奇譚の書が
出たが―――
その中に、山に住む怪の話がある。
樵や山仕事をする人たちの手伝いをするので、
害というものは無いのだが、雄しかいない種族と
いわれ、子を成すには人間の女性を必要と
するのだという。
「こういうのって、どうして異性がいないん
でしょうね?」
彼が何気なく疑問を同僚に投げかけた。
他にも妖怪と言えば、例えば雪女や二口女、
飛縁魔など―――
女性だけというものも多い。
また、西洋でも狼男、珍しいところでは熊男と
いうのもあるらしいが、その女性Verは
無いという。
逆にラミアやハーピーなど、女性しかいない
種族というのもファンタジーの定番だ。
彼らが話し合っていると、師が部屋に入ってきた。
そこでその疑問をぶつけてみると、
「人間以外の何か、って事だからじゃ
ねえのかな」
人間は当然ながら、男性・女性の異性から
成り立っており―――
人間との違いや区別を明確にするには、
『人間にはない』特徴が無ければならない。
それで最も際立つのが、男、もしくは女がいない
という事なのではないか―――
みんながその説明にうなずいていると、
一人から
「……今、LGBTだの何だの言われてますけど、
妖怪やモンスターだとどうなるんでしょうね?」
そこで師も同僚も全員が、微妙な表情で
頭を抱えたという。
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