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百怪  作者: アンミン
闇語り
170/300

70「念」【挿絵あり】

・想いの強さについて


お寺で修行している知り合いの話。


闇語り35話「見分け方」で―――

カエルのフィギュアについての話が出てきたが、


師匠自身はどういう物に思い入れがあるのか、

同僚と一緒に聞いてみたらしい。


「いやだから、そんな物はねえよ」


確かに記念品とか、思い出の品とかは人並みに

あるらしいが―――

守護物とか、特別な意味を持ったものは一つも

無いとの事。


「だいたい、そういう執着を無くすっていうのが

 仏教だろ」


お守りや縁起物として身に付けるのであれば

まだいいが、自分に取って特別な物にする、

なるというのはあまり良くない事なのだという。


「ですが多かれ少なかれ―――

 そういう物を持っている人はいると

 思いますが」


彼の質問に師は両目を閉じて頭を下げ、


「最後まで『付き合う』んならそれもアリだ。

 でも……


 途中で投げてしまう、もしくは逆恨みして

 破棄してしまう場合とかだな。

 これがまた厄介でなあ」


師の話によると、それでうまくいっている場合は

いいのだが、失敗したり行き詰ったりした時―――

人は『それ』のせいにしてしまう事がある。


「ただ捨てるだけならいいんだが、可愛さ余って

 憎さ百倍ってヤツかな。

 壊し方が尋常ではない場合がある」


それでもたいていの物なら、良い事があったと

してもただの偶然であり―――

『力』など無いから、何も起こらない。


「問題は―――

 それなりの『力』を持ってしまった物だ。


 今までさんざん頼ってきたクセに、

 一度失敗した程度で滅茶苦茶にされたのなら、

 そりゃ思うところはあるだろう」


だから一番いいのは、長く手元に置かない、

愛着をもたない。

消耗品として割り切る事だという。


「そう考えると、神社の札みたいに年に一度

 燃やしてもらうのがいいのかもな」


そう言って師匠は苦笑いしたという。





挿絵(By みてみん)

( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

『百怪』は日曜日の午前1時更新です。

深夜のお供にどうぞ。

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