66「蓄積」【挿絵あり】
・無意識に積もったものについて
お寺で修行している知り合いの話。
ある時、彼が同僚と雑談をしていると―――
師が疲れた顔で部屋に入ってきた。
また何か厄介な相談や案件を受けたのかと思い、
「何かありましたか?」
「んー、まあ……
それほどたいした事は無かったんだが」
何でも、30代前半と20代後半の姉妹が
寺へ訪れたそうなのだが―――
姉の方に病気やケガといった不幸が続くので、
心配になった妹が彼女を連れてきたらしい。
だが話を聞くと、姉はかつて妹の事を大変
助けていたそうで―――
今はニート状態だが、恩を感じた妹が家で
面倒を見ているとの事だった。
「う~ん……
別の人から恨みを受けていたとか?」
知り合いが聞くと師は首を左右に振り、
「妹だ」
と即答した。
周囲の同僚も意味がわからず戸惑っていると、
「多分、無意識なんだろうなあ。
それに、いくら助けてもらった恩が
あるとはいえ―――
何年も居候されちゃたまらんだろうし、
恩の大小を計る事は出来んが、とっくにその分は
返すくらいの事をしていたんだろう」
確かに、最初に助けてもらった恩はあるが、
姉もそれに甘えてニートと化し……
妹の方も知らず知らずのうちに、負担を感じ
無意識下で憎むようになったのでは、という
話だった。
「問題なのは当事者の自覚が無いんだ。
お互いに恨んだり憎まれたりする事などないと
思っているから―――
まあ一応、お姉さんもいつまでも妹の厚意に
甘えてないで、行動してみたら?
と言っておいたよ」
無意識の方が、『さらにその先』を行く場合も
あるからな―――
そう師は付け加えた。
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
『百怪』は日曜日の午前1時更新です。
深夜のお供にどうぞ。





