65「自動」【挿絵あり】
・反撃について
お寺で修行している知り合いの話。
よく「この恨み晴らさでおくべきか」と―――
怪談などで、死んだ後の報復、復讐譚には
事欠かないが……
「それにしても、やり返すのならともかく……
『そこまでやる?』というのも結構あるような」
彼が疑問を呈すると、同僚たちもその話に
乗っかってきた。
いくら死んだとしても、そこまで性格が
変わるものなのか?
価値観とかが狂ってしまうのだろうか、と
みんなで話し合っていると、
「まあ―――
自分でも気付かない本性っていうか、
人格とかあるんじゃないのか?」
そこで師が割って入ってきた。
闇語り15話「2乗」でもあったように、
自分の生霊が別存在として憑りつく事はあるし、
「人格というか、魂とか心が―――
3つ4つあるという話もある。
その内の、最も攻撃的なヤツが復讐や
報復を担当すると思えばいい。
あと多分、死んだ後は『自動的』だな」
「自動的?」
彼が思わず聞き返すと、師は
「体があるからまとまっていたそれが、
拠り所を失えば、各自勝手に行動し始めるだろ。
ブレーキや制御が無くなったんだから」
闇語り8話「表裏」でも出てきたが―――
心や理性を司る魂、
肉体や本能を司る魄のように、
例えば先に魂が無くなったりすると、暴走する
可能性がある、との事らしい。
「理性じゃなくても、立場とか利害とかで
反撃出来ないケースは普通にあるだろう。
それが無くなった、抑えていたものが消えた時、
どうなるかって話だな」
それは我慢していただけで、納得していた
わけではない―――
それがわからんヤツが多過ぎると、師は
ため息をついた。
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