64「外見」【挿絵あり】
・人外の執着について
お寺で修行している知り合いの話。
闇語り5話「交渉」において―――
『色恋が一番人の話や意見聞かねえからな』
という話が出た。
「でもどうなんでしょう。
ずっと気に入っている、狙うって事は
あるんですかね」
彼が疑問に思ったのは……
もし外見で惚れられたり好きになられたりした時、
それはずっと続くのだろうか、という事だった。
同僚も『まあ確かに』『年くったり、老いぼれたり
すれば』と、同調するような感じになっていたが、
「そりゃ人間の価値ではそうだろうが」
と言って彼らの師が話に割り込んできた。
「ですが―――
例えば美少年・美少女だった頃に出会ったと
しても、30年40年経てば」
さらにその上になればお爺ちゃんお婆ちゃんに
なるし、それでも恋愛感情は続くのだろうか、
と思って聞くと、
「だから価値基準が人間とは違う。
あちらは人間の何倍、下手したら生死の感覚
そのものが無いかも知れんし」
彼を含め同僚全員が、まだ納得いかないという
表情をしていると、
「例えば人間より寿命が短い―――
犬や猫、鳥でもいいが……
人間から見れば多少年取っても可愛い
ものだろ?」
それを聞いて全員なるほど、とうなずいたが、
「まあだから、生きているうちに『予約』されて
しまうのかもしれんが」
人間と同じ価値観であれば、生きているうちに
諦めてもらえるんだがなあ……
そう師は締めくくった。
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