59「感情」【挿絵あり】
・感情の起伏について
お寺で修行している知り合いの話。
ある時、みんなで雑談していると―――
彼らの師匠が疲れた顔で入ってきた。
結構、感情が表に出るタイプの人なので、
何かあった時は非常にわかりやすいのだが、
疲労しているような態度の時は珍しかったという。
「何かあったんですか?」
「あー、ちょっと相談を受けていたんだが」
彼の問いに師が話始めると、先ほどまで
寺に訪れた人の相談に乗っていたのだという。
寺に来る、という事は『一般的』な相談では
ないだろう。
「内容は教えられないが―――
相手がなあ、怒っているか笑っているか
どちらかなんだ。
ああなると、もう長くはねえ」
師によると、『この世』ではないものの影響を
受けすぎると……
感情の起伏が激しくなるのだという。
『普通』ならざるものの影響なので、『普通』の
状態が無くなる、保てなくなるのだそうだ。
「じゃあ危険なのは、そういった……
『普通』の状態が極端に無い人という
事ですか」
参考のためにと彼が聞き返すと、
「んー……
まあ程度によるが、危険度MAXなら
『普通』しかない状態だな」
その答えに、彼を含め全員が首を傾げると、
「その状態になったらもう―――
『怒る』事も『笑う』事も必要なくなった、
という証明だからな。
全てやり尽くした、ってところだ」
だから感情が表に出ている時は、まだ救いがある。
そう師は付け加えたという。
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