58「予言」【挿絵あり】
・予告や先の出来事について。
お寺で修行している知り合いの話。
とある昔話で、彼と同僚が話し合っていた。
ある時、男が奇妙な人形を拾った。
何とは無しに持ち帰ると、日が暮れた後、
その人形がしゃべるのを聞いた。
「今日、誰それは人形を拾った」
それは拾った当人の名前だったらしい。
気味悪く思ったが、その人形は続けて、
「明日、誰それは金を拾う」
「明日、どこそこへ行くと旨い屋台がある」
翌日、その人形の通りになった。
また夜になって人形が話すのを聞くと、
「明日、誰それは失せ物が見つかる」
「明日、どこそこへ行けば難を逃れる」
翌日、またその通りになった。
無くしたと思っていた物が見つかり、また―――
いつも行く通りを避けたところ、そこで事故が
起きたとの話を聞いた。
『いい拾い物をした』
そう彼は思っていたが、人形の言う事が変化
してきた。
「明日、〇〇はケガをする」
「明日、どこそこの者が家を出て行く」
「明日、△△が急な病で死ぬ」
段々と、自分以外の不幸を予言するように
なってきた。
怖くなってきた彼は神社仏閣に相談に行ったが、
どこも引き取ってくれなかったらしい。
と言って捨てるのも怖く、困り果てていると
「元の場所へ戻して来い。
置いた後は、家に帰るまで決して
後ろを振り向いてはならん」
土地の中でも一番の年寄りが対処方法を
知っていたようで、彼はその通りにした。
以後、これといった事は起こらず、日常に
戻ったという。
途中から彼らの師も話の輪に入ってきていたので、
彼が話を振ってみた。
「予言もいい事ばかりならともかく―――
悪い事もなると、気味悪くなりますよね」
それに師匠は答えず、何か考えている
ふうだったが、
「そりゃ、本当に予言だったのかな」
「……と言いますと?」
師匠の疑問に全員が注目すると、
「最初は良い予言ばかりで、後になって
悪い予言が出てきた……
見方を変えれば最初に良い事が起きて、
後で悪い事が起きた事になるんだが」
ふむふむ、とみんながうなずいて先を
待っていると、
「先に良い事を起こしたので―――
その穴埋めや代償に悪い事を起こした……
というのは穿ち過ぎかな」
師の見解に、全員が押し黙った。
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
『百怪』は日曜日の午前1時更新です。
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