54「識別」【挿絵あり】
・呪いや祟りの判別について。
お寺で修行している知り合いの話。
いわゆる『いわくつき』の物がお寺に持ち込まれる
事があるが―――
どの段階で祟りや呪いと判断するのだろうという
話になった。
「十中八九は関係無いけどな」
師匠の話によると、ケガや病気が続くとか
不幸になるとか……
それらの心当たりは、ほぼ無関係であるとの事。
「そうなんですか?」
彼が聞き返すと、
「これが統計や学術的な調査なら、ある程度
絞る事が出来ると思うが―――
調べられないだろ、こんなの」
例えば同じケースや同じ期間、別々にテストした
場合とかなら、『偶然ではない』と特定出来るかも
知れないが、基本的にそこまで調べてから持って
くる事は無いとの事。
彼とその同僚も『そりゃそうか』と納得するが、
「まあ、調べられたケースはあるにはあったが」
師の話によると―――
とある刀を手に入れた男がいたのだが、
念のため寺社関係者に見てもらったところ、
すぐに手放せと言われたという。
現に、彼自身に切り傷を作るようなケガが
多くなり……
身に覚えのあったその男は怖くなった。
「で、それで手放したんですか?」
「それがなあ」
それでも惜しいと思ったのか、自分の部屋で
保管していたのを、こっそり子供部屋の
押し入れ、そこの天井裏に隠したのだという。
それからというもの、今度はその子にケガが
続出するようになり―――
奥さんに問い詰められて白状し、怒り狂った
彼女の手によって、やっと然るべきところに
持って行ってもらったとの事。
「いやー、普通はあり得ないでしょう」
彼の言葉に同僚たちはうなずいたが、
「まあ、もう普通じゃなかったかも知れんしな」
師の返しに、全員が無言になった。
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