50「検証」【挿絵あり】
・噂や意味、真相について。
お寺で修行している知り合いの話。
怪談話の一つに、狂気に陥った人間という
ジャンルがある。
結局、一番怖いのは生きている人間、という
話だが、ふと彼が、以前どこかで聞いた怪談話を
思い出した。
何でも、噂話のレベルだがお決まりの
『実際にあった事件』という前提で―――
山奥の一軒家で家族と暮らしていた男がいた
らしいのだが、その家では長い間、葬式が
出されなかった。
ある時、その家から男の死体が発見されたが、
他の人間が見当たらない。
ただ、中には大量の手作りと思われる、土で
作られた焼き物があり……
不審に思いそれを調査してみると、中からは
人骨と思われる物が発見された。
恐らく男は、死んだ家族の骨を砕いてそれを
土に混ぜ、陶器のように焼いていたのである―――
「まあ粘土はどこでも手に入るし、陶芸も
その気になれば出来るんだろうけど……
動機は何なんだろうね」
そもそも、気が狂っているのなら動機も何も
あったものでは無いが……
そんな話をしていると、彼らの師が口を
挟んできた。
「状況はよくわからんが……
もしかしたらそれ、積み重ねられていたんじゃ
ねえかなあ」
師が説明してくれたところによると、もともと
チベット仏教や古代仏教に、故人の骨を砕いて
土に混ぜ、それで作った陶器を重ねて『塔』を
作るやり方があるのだという。
『ツァツァ』と呼ばれるもので、いわゆる
供養塔であり、そういう意味では男は家族を
供養していたのではないか、との事。
「なるほど……
まあ現代では遺体損壊とか犯罪になりそう
ですし、黙ってやってしまったのかも
知れませんね」
それで噂に尾ひれが付いていった……
全員が納得した面持ちでいると、
「そもそも、何で家族は死んだんだ?
ってところまでわからないと、な」
それを聞いた彼と同僚は無言になった。
( ・ω・)最後まで読んでくださり
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『百怪』は日曜日の午前1時更新です。
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