48「居心地」【挿絵あり】
・利害の一致について。
お寺で修行している知り合いの話。
因縁や祟りなど、恨みを持って憑く場合―――
子々孫々までその影響を受ける、というのは
これまでの話に出てきたが、
「許してもらえるケースってあるんでしょうか」
彼が師に問うと、少し考えた後で
「断絶―――
例えば一族郎党皆殺しとか、そういうのは
あまり望みが無い。
ただ相手も生きていた人間だから、
交渉次第では許される事もある」
命日に欠かさず供物を捧げるとか、
一定期間儀式を約束する事により―――
そうやって年季を全うすれば、それ以降の子孫に
影響は出ないのだという。
「あとは特殊なケースもあるにはあるが」
その場にいた全員が興味津々で問い詰め、
師は髪をボリボリとかきながら、
「逆に子孫に見切りを付けた場合だな。
代々って言っても、同じ人間じゃなし―――
恨みを持った人間の子孫が善行を積んだり、
逆に自分の子孫が酷い人間になってしまう場合も
あるだろう」
信心深く先祖を奉る家か、そんな事知った事かと
全く顧みない家と……
そうなると元の家を見捨てたり、また『移動』
してしまうケースもあるのだとか。
「敵の家に行ってしまうって事ですか?」
「先祖の行いを悔いて、そちらも供養している
ような家なら―――
そっちに行ってしまう事もある。
そりゃ居心地の良い方が誰だっていいだろう」
ただし、そんな事は二代目・三代目以降で、
ほとんど関係の無い代にまでならないと
滅多に無い、そう師は付け加えた。
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