47「新品」【挿絵あり】
・物への想いについて。
お寺で修行している知り合いの話。
古くなった物には神(もしくは霊魂)が宿る。
闇語り10話「九十九神」でもあった話だが―――
では、身の回りを新品を揃えていれば、
そのような現象に遭わないのでは?
と意見が出た。
ちょうどそこに彼らの師匠が帰ってきたので、
師の見解も聞きたいと、みんなで彼の元へ
移動した。
「ケースバイケースじゃねえか?
そんなのは」
師が言うには、確かに年月を経て変化する
異形なら、新品には湧かないだろう、との
事だが……
「それ以外―――
特に、人の念はなあ」
「?? 新品に人の念ってつくんですか?
あ、作った人とか?」
その質問に、師はアゴに手を当てて考え、
「新品、というか……
新品同様の物って事だ」
師曰く、一度でも人の手に渡った物は、
下手をすると長年使っている物よりも
強い執着がつくのだという。
「まあ、平成や昭和の話ではないが」
師が語り始めたところ、昔、いわゆる
人力車というものがあった時代―――
基本的にそれを運転する車夫は雇われで
あったらしいが、自分の人力車を持つ者もおり、
それは当然稼ぎに直結し―――
車夫たちの憧れでもあった。
そんな中、やっとの思いで自分の人力車を
購入した男がいたが、運悪く買った後すぐに
病気にかかり、車夫を続けられなくなって
しまったという。
彼は泣く泣く新品同様の人力車を手放す他
無かったが―――
「その後はまあお約束で、その人力車を
買ったり使ったりした連中が、次々と
不幸に遭ったって話だ」
だから新品同様でも、前の持ち主次第では
まずい事になる事もある……
そう師は苦笑しながら言った。
「でも、そんなケースはそうそう無いんじゃ」
彼が不安を払拭しようとして問い返すと、
「今の時代、中古売買とかリサイクルとか
いろいろあるじゃねーか」
そう返され、全員が微妙な表情になったという。
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