38「あいさつ」【挿絵あり】
・礼儀について。
お寺で修行している知り合いの話。
古井戸を埋めると良くない事が起こる、
というのは怪談でも縁起としても定番だが―――
彼の同僚の一人が、こんな話を聞いたらしい。
『梅』と『葦』の絵を描いて井戸に投げ込む。
(葦はイネ科の植物。すだれの材料にもなる)
これで『梅と葦=埋めて良し』となり、
古井戸を埋めても問題無いらしい。
駄洒落で? とそこにいた全員が思ったが、
ちょうど彼らの師匠が現れ、話の輪に加わった。
「俺が知っている話は現物だったなあ」
師の話によると、本物の梅の葉と葦を袋に入れて、
古井戸に放り込むのだという。
「そんなんで本当にいいんですかね?」
そう彼が問うと師は座り直して、
「あいさつ、みたいなものじゃないか。
井戸だって問答無用で埋められるより―――
何かの形で『これから埋めますよ』と、
予め説明されたり教えてもらった方が
いいだろう」
どこに何が住んでいるか―――
また念が込められているかわからんからな、
という師の話に全員がうなずいた。
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