33「身代わり」【挿絵あり】
・ペットの死について。
お寺で修行している知り合いの話。
自分の可愛がっているペットや生き物が、
よく危ない目にあった主人の身代わりに
死ぬという話を聞くが―――
それについて彼が同僚と話し合っていた。
「それじゃ、ペットのいない家庭とかは
どうなるんだ?」
と、割って入ってきた師匠から身も蓋も
無い事を言われ、全員が微妙な表情になった。
「でも、立て続けに『そうなる』人って
いますよね?」
なおも彼が食い下がると、師はアゴに
手をあてて、
「確かに、小動物は魂が小さいというか
純粋で―――
影響を受けやすい、というのはあるかも
知れん。
後はまあ……
愛情というのとはちょっと違うかも
知れんが」
言いにくそうにする師匠に、みんなが
興味津々で聞く姿勢を見せる。
「要は、ライフラインの確保だ。
ペットに取っちゃ、主人が健康で
大過なく生きているのが前提で、
自分たちの生活を依存している」
ふむふむ、と全員がうなずくと、師は続けて
「そんで立て続けに死ぬっていうのは……
そもそも頭数が最初から多いっていうのも
あるわけで。
『このままじゃ主人が死んでみんなが
ピンチになるから、代わりに俺が逝くわ』
的な考えが、本能的にあってもおかしく
ないんじゃねえかな」
「何か、『ここは俺に構わず先へ行け』
みたいなもんですかね」
彼が冗談半分でそう言うと、それはそれで
格好いいな、となぜか同意を得られたという。