表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百怪  作者: アンミン
百怪・怪異、不可思議
13/300

13「片手」【挿絵あり】



「ちょうど梅雨の時期ですね。

 あの時も雨が降っていて……」




都内で配送のアルバイトをしている女性から

聞いた話。

彼女がまだ幼稚園くらいの頃、法事があり

親戚一同集まった事があった。




「実家は高知の方だったんですけど。

 どちらかと言うと、実家の近場に温泉があって、

 そこに行くのが楽しみだったんです」




法事の後、親戚の大半は温泉に出向く。

しかし子供はのぼせるのが早い。

彼女も例にもれず10分ほどで出て、

ほてった体を冷やしていた。




温泉の近くにはちょっとした雑木林があり、

それを思い出した彼女は、母や大人が

出てくるまでと、1人林の中へ向かった。




「その時も雨が降っていました

 けど、小雨だったので。

 でも林に入ると」




ポツポツと振り出した雨は、やがて本格的な

降りとなった。

雨宿り出来る場所を探そうと動き回るうち、

林の中で迷子になってしまったという。




「温泉施設まで100メートルも無かったんですけど、

 その時は慌ててしまって」




泣きそうになっていると、ふと雨が止んだ。

しかし雨音は続いている。

不思議に思って空を見上げると、傘が目に入った。




「当時マンガであった、囲碁の人みたいな。

 昔風の着物を着た人が、傘をさしてくれて

 いました」




その人は手を差し伸べてきた。

その手をつかむと、ゆっくりと歩き出した。




「一瞬しか顔を見れなかったんですけど……

 女性か男性かわからないくらい中性的な

 顔立ちをしていて」




やがて温泉施設が見え、お礼を言おうとその人を

見上げた時、すでに姿はなく、片手にハナショウブを

握っていただけだったという。




「だから私は、あのマンガの攻めと受けには

 人一倍こだわりがあるんです」




言わなくてもいいこだわりを言って、

彼女はそう締めくくった。





挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ