24「功徳」【挿絵あり】
・修行について。
お寺で修行している知り合いの話。
そもそも仏教にもいわゆる『超能力』的なものは
あるのだが、それは他人の心を読み取るとか、
前世を知るとか―――
少なくとも仏教伝来以前から幽霊はいたわけで、
それに特化したものは無いらしい。
「そもそも仏教の修行っていうのは、何かを
身につけるためじゃなく、そぎ落とすためって
いう方が近い」
彼の師が弟子たちに語り始めたところによると、
欲や怒りや煩悩―――
もともと持っている本能的な部分に至るまで、
捨て去るのが本質なのだという。
「まあアニメやマンガで、法力だの霊能力だの
間違ったイメージがあるからかも知れないが……
本来は世捨て人って意味合いが強いからな。
『人を救う力を身に着けたいです』
『特別な力が欲しいです』
そういう連中にはまず向かん」
徳を積みたければ募金でも何でもすればいいし、
ボランティアでも何でも人助けは出来る。
要は利己的の逆、利他的に基づくものなら
功徳は積める。
師は弟子たちにそうたしなめるように言った。
「だから俺のようなクソ坊主やどこぞの教祖に
寄付したって、徳なんざ積めんぞ」
そう言って彼の師は意地悪そうに笑ったという。





