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百怪  作者: アンミン
闇語り
122/300

22「落とし物」【挿絵あり】

・身近な呪いについて。



お寺で修行している知り合いの話。


ある雨の日、電車に乗っていたところ、

携帯(当時はまだスマホは珍しかった)に夢中に

なり過ぎて―――

いつの間にか傘が盗まれてしまったという。


それを彼がお寺で同僚とグチっていたところ、

師がやってきて、


「傘はまあ、確かに盗みやすいが―――

 お前らは盗むなよ」


修行中とはいえ僧侶だし、それは当然でしょう、

とみんながそう反応すると、


「いや、そうじゃない」


神妙な顔つきになった師が話し始めた。


何でも、昔からある方法で―――

『憑き物を落とす』ために、わざと自分の持ち物を

落とすやり方があるらしい。


「ひと昔前ならお金や宝石、貴金属といった

 いかにも高価そうな物を『エサ』にするんだが……


 そうやって『厄』を落とし、拾った者に

 『厄』を移す

 移すといえばまあ聞こえはいいが、要は

 『身代わり』にするんだな」


師自身も、何気無い電車内や店内で、『それ用』の

傘を見かけた事が何度かあるとの事だった。


「そんなに簡単に?」


そう彼が問うと、師は両目を閉じて


「だってなあ。

 盗むって事自体、人の道に外れてんだろ」


師曰く、自ら望んで犯罪を犯してまで

自分の物にするわけだから、確実に『移す』事が

出来るのだという。


どんな物を見た事があります? と彼が問うと、


「あんまり高価そうじゃなく、盗んでも罪悪感が

 無さそうな物だな……

 何つーか、よく考えられていると思ったよ」


師の言葉に、その場がしばらく無言になったという。





挿絵(By みてみん)

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