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百怪  作者: アンミン
闇語り
115/300

15「2乗」【挿絵あり】

・生霊の話


お寺で修行している知り合いの話。


彼が師や同僚との話の中で、

『絶対に払えないものは何か』

という流れになった。


神( 自然神 )クラスだと難しい。

交渉するしかないが、そもそも人間が交渉出来るか

どうかも怪しい。


人霊も、時間が経ったもの、特に千年クラスの

神の領域に達したものは困難。


「でも0%というわけではないですよね。

 交渉の糸口さえあれば……」


と、そこにいた皆が視線を師に移した。

師は渋い顔をしたが、その期待に応えるべく口を開く。


「100%は、ある」


全員、身を乗り出して聞く。

それは神か、悪霊か、それ以外のものか。

続いて師の口から出てきた答えは


生霊いきりょうだ」


「へ?」


何人かが同時に拍子抜けした声を発する。

しかし、生きているのなら神クラスになるほど

時間は経ってないし、何より生きているのなら

本人と交渉も可能だ。


「よくある事ではないが、珍しいケースでも無い。

 ……本人の生霊が本体に憑く事があるんだ」


師の説明によると、何かに没頭、あるいは

熱中・突き進んでいる場合に、自身が憑く事が

あるのだという。


「そうなると、異常な能力を発揮する事になる。

 超能力者ではないが、迷いが無い分何をするに

 しても強い。

 仕事で2、3人前の成果を平気で上げたりとかな」


「いい事じゃないですか」


感心して感想を述べると、師は先ほどよりさらに

渋い顔をした。


「うまくいっている場合はな。

 人はいつまでも一定ではない。

 もし自分の考えや理念に疑問を持ち始めたり

 したら……」


特に時間が経ったものは厄介で、完全に自身をも

超えており、そうなるともう手遅れだという。


「ワンマン社長や、ある種の思想に染まっている

 ヤツがよくそうなる」


時間が経つにつれて、本体が

『これはおかしいのではないか』

と疑問を持つ事を、

“それまでの生霊”が許さない。


「そうなるともう悲惨だ。

 自身が自身を殺す事もある。

 止めるには“それしかない”から」


何せ憑いているのは当人だから払えない。

それに迷いが無い分、周囲から恨みを

買い続けている事がほとんど。

それが蓄積されていると、疑問を持った途端に

一気に反撃され、潰されてしまうのだという。


「そのテのやつ等は、人の言う事を聞かなかったり

 相手を脅したりするが―――

 裏を返せば疑問を持つ事が危険だという事を、

 本能的に知っているんだ。

 そこまで“乗っ取られて”しまっているんだよ」


理想に燃えて突っ走るのはいいが、

少しは人の話を聞いた方がいい―――

視線を中空に泳がせながら、師はそう

つぶやいたという。





挿絵(By みてみん)

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