14「子泣き」【挿絵あり】
・その時・その意味について
・その時・その意味について
お寺で修行している知り合いの話。
じじいではない。
しかし、赤ん坊の泣き声といえば怪談でも
定番中の定番である。
「確かに、ゾッとしないものでは
ありますけど」
彼無難な感想を述べていると、
師が口を挟んできた。
「何でそう思う?」
考えてみれば不思議な話である。
赤ん坊は無論非力この上ない。
どちらかというと保護すべき存在であり、
恐怖や用心する対象ではないはずだ。
「暗闇とか、
“いるべき場所じゃないところにいるから”
……と思うのですが」
「それなら何だってアリだろう。
狸の置物でもたまごっ○でも」
それもそれで嫌だが―――
そこで彼はふと思い出した事があり、
気を取り直して聞いてみる。
「そういえば、山神とかは赤ん坊の顔をしているとか、
赤ん坊の声を出すとか……
何か関係が?」
「知らん」
0.2秒で即答された。
師は頭をかきながら続ける。
「神様はよくわからん。だが―――」
師の話によると、赤ん坊というのは言うまでもなく
“この世に出てきた最初の形”
であり、またその声は
“この世で最初に発する音”
という事。
「だから、この世とあの世の境目……
もしくはそれが“薄く”なっている時。
その警告音の役割を果たしていると考えている」
だからもしかすると、赤ん坊の声が聞こえてきたら、
それは外からではなく……
危険を察知した自分の頭の中で発している可能性も
あるのだと。
オカルトやら怪奇現象とやらやたら気味悪がるが―――
まずはその意味を考える事。
それが出来て半人前だ、そう彼の師は目を閉じながら
語ったという。





