13「正邪」【挿絵あり】
・必要悪について。
・必要悪について。
お寺で修行している知り合いの話。
根本的な疑問だが、以前よりどうして仏教徒たる師が
呪いやダーティーな事に詳しいのか、それについて
聞いてみたという。
「知らなければ対処のしようが無いだろう」
実にシンプルな答えが返ってきた。
「もちろん、信徒や檀家相手に話す類の事じゃ
ないのはわかっている。
だが、ある程度力を付けた聖職者や宗教家と
いうのは、多かれ少なかれ知識だけでなく
邪の力も身につけているものだ」
それは各宗教の指導者層でも?
と彼が聞くと
「トップが“力”を持っている必要は無いと、
以前話した事があるだろう。
そういうのはたいてい、“専門”のヤツがいる」
つまり、表面上は正統な宗教でも幹部級の人間が
“邪教”の力をある程度持っているのだという。
「しかし、対処方法を知っていればいいだけなわけで。
その“邪悪な力”を持つ必要は無いのでは?」
「そういう問題じゃない。
“効かないヤツ”が問題だからそれに対抗するために
“力”を身に付けるんだ」
つまり、悪魔や悪霊であれば“聖なる力”で
対処出来る。
しかし―――
「同じ宗教、もしくは聖なる存在。
それらに“効く力”―――
特に歴史が長い宗教だと、そういうのを
“常備”しているもんだ」
有名な宗教でも? と聞くと
「さてな。
ただ、経典やら聖典に、後継者争いだの
お家騒動だの、そういうのが入っている宗教だと、
まあ、なんだ。
必要性があるんじゃないか?」
互いに、複雑な表情になったという。





