04「複製」【挿絵あり】
・御神体についての考察。
余談ではあるが、某寺の隣りはキリスト教系の建物で、
その裏は神社という素敵な立地条件である。
その寺の住職と語ったと、知り合いの修行僧が
こんな話をしてくれた。
「問題無いんですか、ここ」
「いいんですよ。
本来“争え”“従え”なんて教えている
宗教は無いはずなので」
ふとした事から、御神体についての話になった。
「そういえば、裏にある神社の
御神体ってご存知ですか?」
「鏡……とうかがっておりますな」
彼は直接見るのは控えたそうなのだが
(一応仏教も異国の教えなので、神様が怒ると
いけない、という理由らしい)、
直径15cmくらいの丸い鏡という事だった。
「そういうのって、人が作れるんですかね」
「おかしな事を言いますな。
元々は人が作った物でしょう」
身もフタも無い返しだが―――
そういう事ではなく、効力というか神通力を
持つ物として、と聞き返すと
「同じ寸法・同じ材質、ならばあるいは」
「じゃあ世の中にある鏡の中で、一致する物も
あるんじゃないですか?」
「あるでしょうな」
あっさりと認める。
「いや、それはまずいのでは」
住職は手を目の高さまで上げ、縦にして左右に振った。
「ああいう物は、たいてい『対』になって
初めて用を成します」
だから、もし同じ物があっても御神体と
合わせないとダメだし、そもそも御神体は
ほとんど人目に触れさせないから、
その可能性はまず無い、という。
「でも、やろうと思えば出来ますよね?」
「……それを行うまで、
その神の怒りに触れなければ、あるいは」
しばらく2人とも無言になったという。





