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Jの鴉、白鷲を手折る  作者: 数間サハラ
Jの鴉の復讐
2/3

1話 Jの初動

人生に絶望した女子高生、「神田順子」によって無理やり意識を移動させられた男、「鴉間守」は、生死管理局に務める少女、「朝倉奈々」と出会う。不思議な力に巻き込まれた守は、どのようにして解決していくのか

 女子高生になって1時間、俺は転移してしまった少女の詳細を探した。

 少女の持ち物を調べていると、教科書が入ったリュックを見つけた。教科書から、名前が判明した。

「神田順子、か。JKでイニシャルも『JK』ってわけか」

 何にも上手くない。とりあえず名前が分かったらあとは何とかなるだろう。

 ざっと見た感じ、裕福とは言い難い家庭だな。インスタント食品や衣類が散乱している。

 家にも、俺以外誰もいないようだ。随分訳ありとみた。


「すみませーん!」


 声のした方を見ると、壁から首が飛び出していた


「ぎゃあーーー!!!」

「待って下さい! ほら、私、私ですよ! 移動中に会った」


 ああ、確か、朝倉奈々。とか言った霊能者か


「霊能者ではないんですが、まあ、多分それで間違ってませんよ」


 壁から出てきた


「えー。ということで、この問題が解決するまで、私がサポーターとして、あなたを色々サポートします! 文字通りですが」


 ほー。そうか。それはそれで結構助かる。そもそも俺は何も知らない被害者だし、詳しいやつがいないと八方塞がりだった所だ。


「じゃあまず、移動中の話の続きとして、お前と、お前が住む世界を紹介してくれないか」


 了解しましたー。と夜中なのにやたら快活な声で話始める。

 朝倉のいる世界は、人間でいうあの世、で、生き物の転生の理から外れることになった者たちがいるのだという。


「主に理から外れるのには2つの理由がございまして、1つ目は、生命を超越した力を得た存在になる。具体的に言うと、霊力のような特別な力を手にして、生命活動をしなくても、意識を持った永久的存在になること。ですね」


 何となく言いたいことは分かる。要はGOD、になるということか。さしずめ、お前らのリーダーって所だろ。


「当たりです! そうです。 そして2つ目が、私のような、GODから力をもらって、前者と同じような存在になる。そういうわけなんです」


 なるほど、だからさっき壁を透けるようなことが出来たわけか。

 だが、1つ疑問があった。GODから力を与えられるのなら、そうでない者との差は何だ?

 生命の魂は、他の生命に転生するはずだ。

 人間以外の動物は別として、人間だったら、やはりGODから力をもらいたいと思う。

 差があるにしろ、GODの主観で決められるのは少し不満が生じるのだが、


「おい、そこんとこ、どうなんだよ」

「それはですね、力を与えられる。ということは、逆に言うと、自己の支配権をGODに委ねる。ということです。私のような存在は、100%人間です。そしてその100%は、他の存在とは比べものにならない程、大罪を犯した人間なのです」


 黙って聞く守に対し、更に言葉を進める。


「私の今の立ち位置は、天国か地獄と言われたら、地獄です。そりゃ、ほんものの地獄みたいに、痛みや苦しみの罰が与えられているわけじゃありません。」


 でもそこには、永久に続く罪の意識が待っていた。

 神に選ばれた者は、罪の意識の原因である負の力を持った部分の魂だけ肉体から分離し、再び実体化させられる。

 地球での、記憶も、環境も変わって生きている自分を見ながら、罪の抽出部分として、与えられた業務をこなす。

 あの世にもあの世の社会があり、地球と同一視できればそれなりには楽しい。

 だがその住人は、誰もが罪の意識に囚われた、歪んだ、ただ慰め合うように過ごしている。

 何故あんなことしてしまったのだろう。その後悔だけが、何一つ変わらない。寧ろ自分の存在意義としてのしかかるのだ。


「ふーん。で、お前は何をしでかしたんだ?」

「私ですか? 恨みで家族をメッタ刺しにして家に放火しました」


 くっっっそサイコパスじゃねえか!!!!!!


「ですよね。笑って下さい。他人はおろか、自分の家族をぶち殺したなんて」


 いや、笑えねえよ。


「その後、家族の魂を私が分配することになりましたとさ....ぶふっ、すみません。ジョークです」

「····あの世独特のくそ笑えないジョークだな。最適に涼しくはなれたよ。」


 ....やばい。他になんか言わないと、ここの空気最悪だ。

 でも何を言えばいいんだ? 俺なんて、罪から1番遠い存在じゃなかろうか。

 そりゃ、たわいもないイタズラだったらガキの頃に死ぬほどやって親父に死ぬほどゲンコツくらったことはある。

 でも俺は別に親父のことは今でもちゃんと好きだし、母さんや妹、飼っている犬だって、好きだ。それなりの友達や職場仲間、上司、彼女だっている。

 恐らく、こいつらが喉から手が出るほど望んでいる、暖かく優しい世界で、俺は生きてきた。

 だからこいつらの気持ちなんて一切分からないし、分かろうとするのさえ傲慢に見えるだろう。

 だったら、俺の見た世界で、堂々と、せめて嘘偽りなく、話すしかない。


「俺は、お前の存在形態を全力で否定することにする。」

「····ですよね、どうせ私なんて」

「違う。お前の僻みと一緒にするな」

「え?」


 いいか、確かに、食事以外の殺害や、そもそもの快楽殺人などというのは人間特有の非生産的な行為だ。

 だが、キリンの若者がリーダーとの戦いに負けて群れを去ったり、ライオンでさえ、餌をハイエナに横取りされたら為す術なく諦めたりするように、人間には人間の生存競争がある。

 人間の社会の中での罪は、人間だけのものだ。それを裁けるのは結局は人間だけであり、神がどうこうする筋合いはない。

 人間が定めたルールの中では、間違っているのかもしれない。

 だが、それさえも、自分を守るための生存競争だとするなら、違う世界にいる神がでしゃばっていることの方が、間違っている。神が間違っているのだとすれば、


「お前にも色々ありそうだから、細かい所までは分からないが、つまり、俺の自論をもってすると、お前は、何も間違っていない! 」

「····ううっひぐっ、ひぐっ」

「神の世界でいるお前が、人間の世界の罪を背負わされる筋合いは、これっぽっちもない。以上。」


 最後のあたりは自分でも何言っているかよく分からなかったが、もうこれでいいや。さあ、どうくる。


「····あの、守さん、でしたっけ」

「ああ、いかにも」


 ....ふう。


「結婚しませんか」

「やっぱお前、死んでよかったわ」


 ーーー

「何でですか! 今、最高の雰囲気だったじゃないですか!」

「どこをどう解釈したらそういう結論に至るんだこのボルダリング女!」

「胸がないのは関係ないじゃないですか! なんですか、嫌味ですか? 中身男の癖にでっかい水風船ぶら下げて、説得力増し増しにしないで下さいよ」

「だから俺は被害者だって言ってるだろ! こんなもんよりな、俺はもっと凄い核弾頭持ってたんだよ」

「うわ、それセクハラですから。完全に有罪判決ものですから」

「死人がごちゃごちゃいうな!」

「死人に口なしってか! むきー! いちいち上手いこと言わないで下さいー!」


 この馬鹿みたいな小競り合いを10分続けた後、俺は疲労で眠りについた。


 ーーー

「順子! さっさと起きなさいよ! もう本当に邪魔なんだから」


 何故か蹴飛ばされて目が覚めた。目の前には、妙に若作りをした、おばさんが立っていた。


「今日は21時までは家に入ってこないでね。テーブルに500円あるからそれで適当に食べて」


 そう吐き捨てると、おばさんは出ていった。まだこのからだ(神田順子)についてほとんど知らないが、おそらく彼女の母親だろう。

 いまの会話だけでも、状況が把握できる。要約すると、水商売と男遊びにばかりして、娘を全く顧みない、よくあるネグレクトものだ。

 しかも夜9時まで入るなとか、どんだけ欲求不満なんだよ。ヤりすぎて脳みそ萎縮してんじゃないか?


「お、行ったみたいですねー」


 神田の母親が出ていった後に再び壁から朝倉が出てくる。相変わらず怖えぇよ。


「で、これからどうするんですか」

「その前に、朝倉は何が出来るんだ?」


 この生活をするにあたって、なんのトラブルもなしに終わるとは思っていない。

 神田は確実に何かを抱えているし、それを探ったり、解決したりしなければ、元の自分に戻れない。と、俺の勘が働いている。

 とにかく、何らかの行動を起こすのには、この体じゃあまりにも弱すぎる。

 ガリガリという訳ではないが、空手をやっていた俺と比べて力もなければ、重さもない。重いとすれば、やはりこの無駄に発達した胸の脂肪だ。

 全く、女性はよくこんな体で走ったりできるもんだ。

 と、なると、宣言してくれた通り、朝倉のサポートが必須になってくる。全属性魔法使い放題とか、最強の武器とか、強そうなの期待。


「そうですねー 裏工作とかなら得意ですよ。私、こう見えて機械強いですし、人から見えないように出来ます。 証拠集めとかに有用じゃありません?」

 ····なるほど、まあ、おいおい考えるか


「なんですか。 その『案外大したことないんだなー』みたいな目は」

 よく分かってるじゃねえか。諜報員の面接の模範解答が欲しいんじゃない。何でもいいからチート能力が欲しいんだ。どうせなら憂さ晴らしで大人数をボコボコとかしてみたいし。


「なんかないの? 機関銃とか」

「すみませんが、ここは現実世界ですから。変な小説に感化されてませんか?」


 そうだ。おかしい。転移転生無条件チートなどは俺が嫌いなジャンルの1つだ。何の努力もしないで力を得て、それで威張りちらしてハーレムを形成したりするのが気持ち悪くてたまらない。····まさか!


「? どうしたんですか」


 慌てて俺は部屋にある本棚を漁る。俺じゃないとすれば、すれば!!!


 タイトル『転生した異世界で最強の剣を振るいます』

『こんな俺でも異世界ハーレムを作れちゃった件』

『異世界モンスターと悠々自適農業ライフをしたくてもそうはいかないのだか』


「なんじゃああこりゃあああ!!!!!!」

「なるほど、転移した意識が元あった意識に影響されている。貴重な現象ですね」


 冷静に分析をするな! これはゆゆしき事態だ! この歳になって厨二病なんて絶対に嫌だ!


「落ち着いて下さいよ。守さんがたとえ厨二病になっても出ないものは出ませんから」


 それでもチートじゃないにしろ、力の増加は欲しいんだが····


「分かりました。方法を調べてみます。他にして欲しいことはありますか?」


 今日の所は、体の女の立場がどのようなものか、もっと知る必要がある。とりあえず通っている学校に行くことにした。

 そして、1番心配なのは、今の俺の体の状態だ。俺の魂が女の方にある今、体は死んでいないか。朝倉には俺の体の安否を調べてもらった。


「さてと、じゃあ言ってみるか」


 再びセーラー服を着て、リュックを背負ってドアを開けた。もちろん500円も持って。

 道中はほとんど何もなかった。1つ挙げるとすれば、何人かの同じ学校の生徒がこちらを見てヒソヒソ話していた。これは学校で一波乱あるな。

 校門前についた。『都立東京西高等学校』ここが神田が通う学校だ。

 制服も同じ、間違ってないな。

 確か、2年4組だったっけな。一応誰かに聞いてみるか。

 前の女子に守は話しかけた。


「おはよう。お馬鹿な質問して申し訳ないんですが、私って2年4くみーー」


「じゅんちゃん!!!」


 え? まさか知り合い?


「戻って来てくれたんだね! 心配したんだよ。いきなり不登校になって、私は、怖くて何にも出来なくて、だから!」


 いや、ちょっと待って、情報が追いつかない


「私は! 死んでもじゅんちゃんの味方だから!」

「なんかよくわからないけど、ありがとう」


 誰だ? 神田の友達っぽいな? 眼鏡がよく似合ってる地味系だけど、清楚で可愛らしい印象がある。


「じゅんちゃん? なんかいつもと違うね。やっぱり、辛かったんだよね! 力不足でごめん!」

「まあ、いや、ちょっと後で大事な話があるんだ。いいかな? とりあえず、教室に行こう」


 勝手にオロオロしているメガネ娘と一緒に、教室へと向かった。


「じゅんちゃん? そっちは6組だよ。4組はこっち」

「あ、あはは〜 どーしたのかなー、あははー」


 オロオロしてるのは俺の方だった。ふう、危なかった。全く、何で俺がこんな苦労を。文句言ったってしょうがないんだが。

 そうこうしているうちに、教室のドアの前についた。

 不登校らしいからどんな反応か不安だが、こんな友達がいるんだ。大丈夫だろ。


 いざ、参る!


 ガラガラガラ


「おはようございまーーーす」





中の主人公と違って、主は異世界大好きです。ハーレはあんまりですが、チート能力でモテモテなら、何にも困ることなんてないもんね!

次回から、ようやく本格的に動き出します。

乞うご期待。

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