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雷雨の夜に1

1.


 雷。そう遠くないところに落ちたようだ。稲光からの音が近い。そう遠からぬうちに一雨降って来るだろう。晴れてる時は豊かな自然の落ち着いた風景の林道だが、荒れそうな天候に加えて日没近くという時間帯が少々薄気味の悪さを醸し出していた。




「このままだと到着前に降られる。少々急ごう」


「はっ」




 道をゆく馬車の護衛団を率いる者たちがそのような相談をしてそう間もなく、ぽつりぽつりと幌を叩く雨音がしてきていた。




「くあー!!参ったなあ!こりゃ本降りになる前になんとか宿までたどり着きてえっすね!ライエル団長!」


「ああ。だが、ローマン。ただでさえこの辺りは見通しが良くない。念の為に周辺の警戒だけは用心するよう前方の皆にも伝えてくれ。あいつらなら言われんでも分かってるとは思うが一応、な」


「了解っす。んじゃ、ちょっと前にいるグアヘの野郎逹に言ってきますわ」




 前の部隊へと伝令に走ったローマンではなく、前方の団を率いているグアヘがこちらに来る姿が見えた事をライエルは不審に思う。




「グアヘ、どうした?」


「団長、何か行き倒れがいるみたいです。それも異国の服装をした爺さんみたいです」


「異国の老人だと?」


「はい。如何しましょうか?」


「盗賊などの罠、という可能性はあると思うか?」


「うーん、可能性はゼロではないですが、異国の服装をした爺さんって不審過ぎますからね。ちょっと考えにくいですね」


「そうか。とりあえず確認してくる。グアヘ、しばらく指揮はまかせるぞ」






 宿場の村に一団が到着したのは夕方。その頃には雨は完全に本降りになっていた。


「爺さんは相変わらず意識は戻らないのか。誰かこの服装がどこの国の物か知ってる奴はいるか?」


「全く見たことないですね。似たような物すら記憶にない。でも、辺境にしては仕立てが随分としっかりした服なんですよね」


「とりあえずは目覚めるのを待つしかないな」


「いや、よく見ると手のひらのタコがすごいなってだけだ。農民なのかもしれんな」


「まあ、当分は目覚めそうにないですし、とりあえず飯にしましょうや。早く一杯やりてえっすわ」


「そうだな……まだ道半ばだしほどほどにしろよ」


(しかし、この爺さんはよく見ると手のひらのタコが凄いな。剣士なのか?……いや、身体の線の細さからして農民かな)

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