プロローグ
書き物初心者です。温かく見守っていただければ幸いです
プロローグ
問診に来た医師の表情が私の病状が芳しくないと告げている。
この味気ない天井を見上げる続けるのもそろそろ終わりが近づいてるようだ。
長きにわたり酷使し続けてきた、いや、鍛え続けてきた身体がもはや見る影もない。
全日本選手権不敗の剣士、雷神…最強の称号を欲しいがままににしてきた私もどうやら年貢の納め時らしい。
「先生、お世話になりました。もう充分ですじゃ。これ以上は悪あがきというもの。残りの寿命は楽に過ごさせて下され」
「藤堂さん、何をおっしゃいます。強面の方たちから鬼と呼ばれるあなたらしくもないですよ」
「かかか、鬼などと呼ばれていたとはのう。まあ、このうるさい鬼も久しく道場に顔も出せてないのでな、三途の川で人に戻る前にもう一度だけ鬼として偉そうにふるまわせて下され」
「藤堂さん……。すみません。私の力が足りないばかりに」
「何をおっしゃる。先生のような名医に診て頂けたのは僥倖でございましたぞ。では、本日をもって退院させて頂きますぞ」
私の担当医は若いが流れ作業のように患者を扱わない、好青年だった。
まあ、最初に私を診察した傲慢な中年医師を派手に一喝したからそういう人物にお鉢が回ったのかもしれんが。
……さて、残り時間も短い。気力が保つうちに鬼としての最後の役目を果たしに行くとするかの。
夜半。道場の稽古を指導し終わって帰宅。入院してから久々に帰ったので、部屋の中の空気が若干篭ってるのはまあ、仕方ないだろう。
床に横になっていると、全身から力が抜けていく感覚。どうやらその時がきたか。
未練が無いわけではない。肉体に衰えを感じだした日から、逆に技は冴えわたっていった。この技を究めたかった。稽古を見ている警察の道場にいる有望な子達の才能の開花を見届けたかった。
「まあ、それも 贅沢が 過ぎる というものか……」
そして、意識がだんだんと薄らいでいった。