コラボTu➂
「ズダダダダ! ひゃふぅ!!!」
ねむりんさんは、激戦区となったプレイヤーが集っている中心地で連続キルをしている殺戮マシーンと化していた。
別窓で開いているねむりんさんの配信では殺戮の様子が映されていた。そう、彼女はVTuberや配信者内のTPSのシューティングゲーム大会で優勝や準優勝するほどの実力を持っているのである。
僕は、見つけたバイクでねむりんさんがいる近くへと向かう。
「うっひゃあああああ! ひゃっほい!!!」
「すごいですね、めちゃくちゃキルしているんじゃないですか?」
「わかんない! わかんないけどたのしいいいいいい!!!」
僕は、会話して場を繋ぎつつ近くの建物の二階に身を潜める。
ねむりんさんはエイム力もあり、敵を即座に見つけたら倒してしまうほどに対人戦においてはVTuber随一である。しかし、それは対人であり、相手が明確にわかる近距離の話である。
パンパンッ!と銃弾が地面に数発当たる音がする。
「狙われてるぅ~!」
ねむりんさんの動揺が声から伝わってくる。
「大丈夫です! 落ち着いてください」
僕は、まずは落ち着くようにねむりんさんを一旦なだめる。僕は、窓からチラチラと敵の居場所と状況を確認し、頭の中で整理する。
「ごめんなさぃ。 ねむりんが、勝手に突っ込んじゃって、勝手に死んじゃってぇ……」
明らかにシュンとした声が聞こえてくる。ねむりんさんが活躍していた時の違いコメントの質も微妙にマイナスな方へと変わってきていたのを僕は逃さなかった。
「大丈夫って言ってるじゃないですか」
「で、でもぉ……」
「僕たちが二人とも死んじゃってからですよ。反省会は――――」
僕は、窓から銃を構える。Kar98kという名の……。
Kar98kは元々ナチス・ドイツで開発されたボルトアクション式小銃である。僕は、二階からねむりんさんが撃たれたシーンをクリアリング、まぁ、隠れながら敵を確認していた。ヘッドショットであれば、レベル3ヘルメット以外で一撃で敵を沈めることができ、強力な武器である。ただし、まぁ、スナイパーライフル全般に言えることなんだけど、外した時の隙は大きいので注意が必要である。
傷を負ったねむりんさんのプレイヤーに追撃をしようと茂みから顔を出す。
「ッ――――!? そこかっ!!」
僕は、そこにいる敵をKar98kで撃つ。
弾は頭に当たりヘッドショットが炸裂したらしい。気絶ではなくキル出来たらしい。
すると、相手プレイヤーの仲間であるもう一人が何発かこちらに向かって撃ってくる。一、二発当たるが、動揺しない。
相手を素早く見つけて撃つ!
一発目で完璧に頭を打ち抜き、二人を倒してしまう。
「まぁ、反省会はないんで大丈夫ですよ。 だって、僕たちで優勝しちゃいますもん!」
「へっ!!」
ねむりんさんおびっくりした声が聞こえた。僕はそこの近くに潜んでいた二人のプレイヤーもキルしてしまう。
僕には、VTuberとして活動していく時に、女性声で完璧な女性になること以外で、人気になる秘訣となった特技が二つある。
一つ目、僕は、日常生活ではあまり友達がいなく身を潜めていることが多い(今回はイレギュラーすぎてびっくりしちゃったけど……)。なので、存在感を消して空気になって、敵を倒すことには慣れているのである。バレて真正面から来られるとテンパって動けなくなっちゃうけど……。
ひたすら潜伏して、敵に気が付かれないでシューティングゲームでは勝つことが出来ること。
「ここら辺はねむりんさんが一掃してくれてたおかげでもういないみたいですよ」
「ここら辺でちゆっくり、二人で駄弁りませんか?」
「えっ、いいんですかぁ?」
「もちろんっですよっ!」
コメントの速度が流れていく速度が上がっているのが見える。盛り上がっているのだろう。
二つ目は、空気を察して皆に合わせる、もしくは操ることが出来ること。コメントの流れから視聴者の雰囲気や感情をある程度読み取りそれに合わせて動いたりすることが出来るのだ。
僕は、完璧に視聴者のボルテージが上がっているのを感じていた。
これが、ライトちゃん(未来光)が大物YouTuberとなった秘訣の一部である。