登校
「ふぁぁ、よく寝た」
僕は、昨日起きた出来事を振り返っていた。
僕は、クラスの委員長こと、天羽さんにVTuberのアカウントを特定されてしまう。その場を濁して逃げ出してしまうが、根本的な問題は解決していない。
その後、家でねむりんさんと通話をする。最後に、詳細は伏せて自分がリアルのとある人物にVTuber活動がバレたということを軽く相談した。ねむりんさんならどうするかきいてみた結果としては、「ねむりんはメンドクサイ人間はムシするぅ~」とあまり使えないアドバイスを貰った。
まぁ、大体そんな感じである。
あのまま考えていても、学校に遅刻してしまうだけなので、朝の身支度を終え、家を施錠し、通学路につく。
「ひっかる~、おっはよーーーーーー」
「のわっ!!」
後ろから元気いっぱいの声が鳴り響く。しかし、すぐ後に、僕は後ろからの衝撃が伝わってくる。それに僕は耐えられずにバランスを崩し、前のめりになってしまう。
「おっと、大丈夫?」
声と同時に右腕を柔らかい何かに包まれて僕の体は地面すれすれで静止する。
右腕の方向を見るとバスケットボール並みに大きくて、マシュマロのように柔らかい双球が僕の腕を包んでいた。
「のわわわわ!!」
僕が慌てて距離を取る。それは、大きな胸だったからだ。
「光どうしたの?そんなに慌てて?」
「ど、どうしたのってあの……、って向日葵かぁ」
僕は、でかい胸の持ち主を見て安堵する。そこには、きょとんとした幼馴染の多田隈向日葵がいた。彼女は、隣の家に住んでいる。幼稚園から家族ぐるみで交流があるので僕がネットを介さないで、素で話せる数少ない女子の一人である。
「光、元気ないね?朝にご飯おかわり出来なかったの?」
高2女子の平均身長のよりも低く、一見小学生のような外見の向日葵から悲しそうな目で見つめられる。まるで餌を取られた子犬のようだ。
「大丈夫だよ。僕は、朝は食べられない方だから。ちょっと悩んでいただけだよ」
「大変!! 光悩んでるの?ごはんいっぱい食べて元気出そうね?」
「あぁ、うんそうだね」
僕は、なんだか元気な向日葵を見ていたら悩んでいたことがどうでもよくなってきた。
「あっ、えへへぇ~、光が元気になったぁ~」
向日葵は名前に負けないくらい大きな顔で笑っていた。
♰
隣のクラスの向日葵と別れて、自分の席に座る。
すると、委員長が僕を待っていたかのように僕の席の近づいてくる。
「なんだなんだ」「我らのマドンナが光に絡みにいっているぞ」「委員ちょーーーーーー!!!うわあああ」「あの委員長様が光君と?」
クラス中の視線が悪い意味でもいい意味でも僕に集まっていた。
「ちょっと屋上まで来てくれない?」
「あ、はい……」
これは、決闘ですね。きっと……、はい。