通話中ー
「はぁ……どうしよ……」
僕は、自室に着くなりベッドに横になる。リアル世界の住人に僕のネット活動がバレてしまっていたのだ。しかも、ネット上での僕の性別は女の子で……
「うわああああああああ、恥ずかしい死にたい!!!!」
自分をリアルで知っている人間に今までの活動を見られていたかと考えるととてつもない羞恥心が僕を襲う。僕は頭を抱えながら枕に顔をボスボスと打ち付ける。
「コロシテーーーーコロシテーーーー!!! んっ!?」
ピロリーン!!メールだよっ!!
その時、パソコンのメールボックスに一通のメールが届いたと知らせてくれる音が鳴り響く。僕は、ベッドから立ち上がりメールを確認する。
「あっ、メールだ。 ふむふむ、ねむりんさんからだ」
「ねむりん」とは、脱力系VTuberとして人気が出ている人気VTuberさんである。見た目は、お姫様のように装飾されたネグリジェを纏っていて目はたれ目でいつも眠そうに見える。
普段の雑談枠やRPG系のゲーム実況はゆるふわ系なのだが、PUBSやOrtniteなどのシューティングゲームつまり一旦銃を握ってしまうとキャラが180度変わってしまう。そんな可愛らしさと面白さがファン層からうけている。
そんなねむりんさんからのメールの内容を要約すれば、「明日予定していたコラボの詳細の確認を今、Skypoで行わないか?」という感じだった。
僕は、急いで「OK」だと返信する。
YouTuberは、企業と契約して活動している層と個人で全て行っている層との二つがある。これは、普通のYouTuberだけではなく、バーチャルYouTuberにも言えることである。僕こと、「ライト」も「ねむりん」さんも個人勢なのでこうやって段取りやら、コラボのお願いやらを全て自分でこなさなくてはいけないのである。
そうこうしているうちに、相手からSkypoの着信がくる。僕は、急いで、通話の準備をする。
「はい、ライトですっ!!」
僕は、声を高くしてSkypo電話の応対をする。僕は、元々一般男性よりも声が高い。なので、少し声を高くすることを意識すると変声機なしで、完璧な女の子声になるのだ。ネット活動では、いつもこの声で活動している。
「ねぇむりんでぇす」
気怠そうで、甘え上手な声がヘッドホンから聞こえてくる。聞いていると脳がとろけ出しそうな声である。
「今回は、コラボのお誘いをしていただきありがとうございます」
僕は、相手に見えないのだが、ぺこりと頭を下げる。
「いやいやぁ。 こちらこそぉ、憧れのライトちゃんとコラボできるなんて嬉しいよぉ」
「憧れだなんてそんなぁ……、照れちゃうのでやめてください」
「ほんとだよぉ。 あっ、そうだぁ。 早速本題に入っちゃうんだけども、雑談枠終わったゲーム枠でのコラボのゲームは何がしたいとかあるぅ?」
「そうですねぇ……」
僕は、考える。ねむりんさんはシューティングゲーム実況で人気が出た人である。ねむりんさんの視聴者さんもそれを望んでいるのじゃないかと考える。
「そうですね、PUBSなんてどうですか?」
「PUBSかぁ……。 いいけど、清楚なライトちゃんに殺戮をさせるのかぁ……」
「こ、こう見えて、ぼくだってやれば出来るんですよっ!!」
「あぁっ、拗ねてる幼い子みたいでかわいい」
なにやら向こうからバタバタと音がする。悶えているのを必死に我慢しているらしい。
「もぉっ!! PUBSでいいですねっ!!」
なんやかんやあって、コラボの話し合いも盛り上がっていたが、それも終わりに近づく。
「じゃあ、今日はこの辺にしときましょう」
僕が、通話をきろうとすると、
「待って!」
ふいに、ねむりんさんから待ったがかかる。
「ライトちゃん、なんか元気ない~?」
「えっ!!!」
「通話中楽しそうって感情も伝わってきたけど、それ以外に悲しい?辛い?みたいな感情もなんとなく伝わってきたから。ライトちゃんの、ファンだから声音で元気ないのくらいよ?」
ゆるふわしているのにそこんところは、鋭いみたいだった。
学校生活で、自分が身バレしてしまったことを話してもいいのか一瞬迷ってしまった。しかし、同じVTuberとして共有できる悩みだと思い、打ち明けることにした。
「じ、じつは……」
僕は、重い口を開いた。