バレちゃった!?
「あなたバーチャルYouTuberのライト様よね?」
高校二年四月、僕、未来光は窮地に立たされていた。
クラス替えして早々、才色兼備で、学校のヒロインとも呼ばれるこのクラスの学級委員長天羽静香に放課後僕だけ残るようにと帰りのホームルームで言われていた。
絶対に居残り&説教させられるかと思っていて億劫で仕方がなかった。
しかし、今の現状はどうだろう。目の前の整った顔の女の人から自分のネットのハンドルネームを告げられたのである。
「なんでそんな浮かない顔をしているのかしら? もしかして具合でも悪い?」
断じてそんなことはなかったが、委員長にその名前を告げられてから冷や汗が止まらず、気分も悪くなってきたみたいだ。
「昨日の配信きいていたら赤の他人には思えなくって――――」
委員長が近づいてくる。長い黒髪からは、JK特有であるシャンプーの甘くて、いい匂いが僕の鼻を刺激する。
内気で女性とあまり関わりの持たない僕は、刺激が強すぎるのと美しい顔立ちをした委員長が顔を近づいてきたことに戸惑い後ずさる。
僕は、思考を巡らせていた。昨日何話したっけと。身バレに繋がるようなことは極力避けていたはずだ。普通にゲーム実況して、残りの時間で自分のお絵描き実況して……「あっ……」。思わず声が漏れてしまう。
お絵描き実況中に学校の授業中のことについて話してしまったのだ。地理のある問題をあてられて間違えてしまったということを――――――
「し、し、し、し、静花さん!!! ぼ、ぼ、ぼ、ぼ、ぼくは、ばばばば、バーチャルユー→チュー↑バー↓なんてしししし知らないなぁ」
「とぼけてもむだよ!!! わたくしは、もう一度過去の放送を遡って何回も……」
「はーいはいはいはいはい!! おほほーいおほほほーい!!! ダンゴムシをわたくしで隠して世知辛いのじゃーーーーーーー!!!! ピロリンッ!!」
「えぇ……」
「……(やっちまったぁ)」
委員長こと静花さんは、規律に厳しいときく。僕のVTuber活動がばれたら禁止されるかもしれないという思いから、話を遮りたくて、VTuber名セリフオンパレードをしてしまった。これじゃにじさんじじゃなくて大惨事である。明らかに委員長にひかれている。
「あ、えっと……、じゃあ、僕はこれでっ……」
「あっ、待って――」
いてもたってもいられなくなり僕は立ち去る。
僕が、VTuber活動をしているとばれてしまってはダメなのだ。なぜかって??
だって、僕は…………、男なのにTS(性転換)して女の子として活動しているんだから!!!!!!
♰
「もぅっ、ただファンって伝えたかっただけなのに……」
わたくし、天羽静花は大のライト様ファンでなんです。 なんなら、毎回妹のアカウントも使い、スーパーチャットで10万円もつぎ込んでいるほどの大清楚ライト様を愛おしいと思っているくらいです。
「はぁ、今日もライト様にお近づきになれなかった」
わたくしは、誰もいなくなった夕焼けに照らされた教室を施錠して一人、廊下をとぼとぼと歩いていました。