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再会


「お姉様、目が覚めたのか!」


 布団から体を起こすと、ミリアが私に声をかける。

 私の左には眠っているメラが。

 お腹の傷は包帯で処置されている。


「目が覚めないかと心配したんだ!」


「あれから何日経ったのかしら?」


「もう3日だ。鎧が昼夜構わず働いてくれたお陰で、我々の犠牲はゼロのままだ」


 それは良かった。

 私はミリアの悲しむ顔を見たくない。


「メラはお姉様のそばにずっと居たぞ。頑張って起きてると言っていたが、少し前に眠ってしまった」


 ふとミリアの右手の甲を見ると、私のと同じ紋章があった。

 メラの涎を拭くついでに確認すると、メラの舌にも同じ紋章が。


「戦場は?」


「少し前に人間が引いていった。ただ、まだ安心は出来ない」


「そう……」


 鎧を呼び寄せると、一部欠けたり潰れていたりした。

 そこまで有利な戦場ではなかったらしい。


「エルフに、疲れてるとは思うのだけど死体から鎧を剥いできて欲しいの」


「伝えてこよう。エルフが十人瞑れるより鎧が一体増える方が有利なんだから変なものだな」


 立ち上がろうとすると、お腹の傷がほんの少し痛む。

 気にせずに立ち上がり、そばにあった服を肩に羽織るように着て、一番上のボタンだけで留める。


「取り合えずお腹がすいたわ。ご飯にしましょう」


 メラを抱き上げ、真ん中の広場へ。

 配られるご飯を受けとり、食べる。


「んぅ?」


 少しすると、メラが目を覚ました。


「おはよう、メラ」


 メラの目に涙が溢れる。


「おか……さん、居なくならないって!」


「だからちゃんと帰ってきたわ」


「すっごく心配して……!」


「ええ、大丈夫よ。私は貴女を見捨てたりはしないわ」


 今日は珍しくメラがよく喋る。少し嬉しい。


「お姉様が眠ってしまって、私とも会話することが多かったからな」


 私だってミリアねぇと呼んでもらえるようになったんだ、とミリアが自慢げに話す。


「お姉様、怪我は大丈夫か?一応処置はしたが、まだ痛むだろう?」


「大丈夫よ。この程度、怪我とは言わないわ」


「結構な大怪我だった気がするが……。まあ良いか。食欲もあるようだし」


 血が減ったせいか、いつもより体が気だるい。

 でも、ここでちゃんと食べなければ後に響く。


「お姉様、鎧の用意が出来たようだ。他に必要なものは有るか?」


「私の馬車に有るわ。敵が来る前に戦力を増やしましょう」


 皿を片して、馬車を呼び寄せる。

 中から道具を取りだし、端の鎧から掘り込んでいく。

 もうすでに何度もやったことだから、早さを意識して確認作業はしない。


 取り合えず18体の鎧が完成した。既に居る二体を足して20体。

 エルフの里は柵があるから、四面の門を五体づつで対処。

 他は少しづつ後退しながら増援の到着を待つ戦法でいける。


「さて、もう少しで来るかしら?」


 陣はエルフの里に少し離れたところにあるはずだ。

 私だったら半日のところに作る。

 往復1日。一度帰ると言うことは何か切り札を用意しているのだろう。

 物であれば行軍速度は下がるはずだ。人であれば、やはり時間がかかるはずだ。これで1日。

 偵察は見つける度に殺害している。向こうからしたら情報がわからないのは困るから、様子見をするだろう。これで一日。

 とまあ、ざっくり計算だが正直いつ攻めてきても構わない。

 主要地点を消耗の無い鎧が守っているから人員が余っている。

 それを周囲警戒の人員へ避けるから休憩時間が増える。


「お姉様、遠見の魔術で敵を発見したそうだ。西から500程の歩兵が殆どだ」


「わかった、私も出るわ」


「あと、気になる情報なのだが……」


 気になる情報?何かあったのだろうか?


「勇者が居るそうだ。確定じゃない。だが、格好からして魔法の勇者だ。だとしたら、相性が悪い」


「魔法……。九条君かしら?それは私に任せてもらえるかしら?」


「大丈夫か……、まあ、私が心配してもどうにもならない。最悪メラだけ連れて逃げてくれ」


「あら、私がそんな薄情に見えるのかしら?ちゃんと貴女も連れ出すわ」


「私はここに残る」


「いえ、例え手足を斬ってでも連れ出すわ。既に村長の了承も貰っているし」


 正確に言えば、戦闘の前に連れ出してほしいと言われた。

 最悪ミリアの兄を差し出すからと。

 祖父として、村長との板挟みの末の決断だ。私も、それに答えたいと思う。

 まあ、九条君が率いているのであればなんとかなるかもしれないし、鎧二体で数日持つのであればなんとかなると思う。


「杞憂であることを祈る、か」


 相手が他に奥の手を用意していないことを。


 ☆ ☆ ☆


 門の付近。

 見張りの兵士がミリアと私に気付き、頭を下げる。


「戦闘中だ。そのままでいろ」


 そして、私の後ろの騎士五体に明らかな喜びの顔を浮かべる。


「他の門の担当はエルフでやろう。西に他の15体も向かっている」


 鎧の一体が私を、一体が私が抱えていたメラを、もう一帯がミリアを抱え、音もなくジャンプする。

 それだけで約5メートルの門を飛び越える。


 人間が鎧を着るのとは訳が違う。

 人間だって、裸で飛べば鎧で飛ぶより高く飛べる。さらに、魔道具だからリミッターは存在しない。こんなのは、跳び箱を飛ぶのと何ら変わらないのだ。


「さて、見えてきたわ」


 門の前に仁王立ちする鎧が20体。か弱い女子供が3人。

 シュールな光景だ。

 ミリアに拡声の魔法を使ってもらう。


「人間の軍隊よ、ここはエルフの土地だ。もしも貴様らがここを侵すと言うのであれば、私の……魔道具の勇者、シキ・クロイに剣を向けるものと心得よ!」


 台本は、エルフの一人が作ってくれた。

 私が勇者であることをしらないミリアと、先頭を歩いていた九条君が明らかに驚いた顔をする。


「久しぶりね、九条君。再会の後直ぐで申し訳ないのだけど……」


 貴方がここを攻めると言うのであれば、全面戦争も辞さないわ。

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