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幻想のなかで、いつまでも  作者: はるやこやな
1/1

運命の王子様




 まさか、あの(ひと)が――


 その時まで想像もしなかった。


 あのヒトが、私の運命の王子様だったなんて――











 その日も私はたった一人で。

 一人ぼっちでボロボロのアパートから学校に通った。

 そこで寄ってくるのは、私を(いじ)める悪い魔法使いばかり。




 でも――こんなの、変。


 だって私はお姫様なのに。

 今は(まず)しくても、みすぼらしくても、魔法使いは私を素敵なお姫様(プリンセス)に変身させてくれるはずなのに。

 そして私を、運命の王子様のもとへ導いてくれる。


 それ


 なのに――





「……おいっ。こっちこっち。早く連れてこい」

 悪い魔法使いの一人が、他の魔法使いたちへ手招きをする。

 私は魔法使いたちに捕まって、暗い橋の下で草むらに投げ出された。

「ここなら暗いし、夜は人も来ねぇだろ……楽しめそうだな」

 悪い魔法使いたちは、三人がかりで私を地面に押さえつけて、下卑た笑みを向けてくる。

「前からヤりたかったんだよなぁーこいつ。可愛いのに頭おかしいとかいわれて、女子にハブられてるし、親もいねぇらしいし……チクられることは、ねぇよな?」

「ビビってんじゃねーよ。写真撮って脅せば、気ぃ弱そうだし、誰にもいえやしねぇって。ほら、早く脱がすぞ」

 魔法使いたちの手が、私の着ている制服へと伸びてくる。


 助けて。

 早く助けて。

 今日、現れるはずでしょう?


 私の、王子様――




 そう願ったとたん、魔法使いたちの悲鳴が聞こえた。


 あぁ――やっときてくれた。

 ずっと待ってた、私の、運命の王子様。


 その(ひと)は、王冠をかぶってもいなければ、白馬にも乗っていない。

 ただ、私を虐めた悪い魔法使いたちの血で、たくさん汚れていた。

 手には、たった一本のナイフ。

 やっぱり王子様は、優しいだけじゃなくて、強いんだ。格好いい。


 それなのに、王子様は私のことを不安そうな顔で見下ろしている。

 私はそんな王子様に向かって、両手を差し出し、優しく微笑みかけた。


「会いたかった……私の王子様……」


 あぁ――やっぱり魔法使いは、姫を王子のもとへ導くものなのね。

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