運命の王子様
まさか、あの男が――
その時まで想像もしなかった。
あのヒトが、私の運命の王子様だったなんて――
その日も私はたった一人で。
一人ぼっちでボロボロのアパートから学校に通った。
そこで寄ってくるのは、私を虐める悪い魔法使いばかり。
でも――こんなの、変。
だって私はお姫様なのに。
今は貧しくても、みすぼらしくても、魔法使いは私を素敵なお姫様に変身させてくれるはずなのに。
そして私を、運命の王子様のもとへ導いてくれる。
それ
なのに――
「……おいっ。こっちこっち。早く連れてこい」
悪い魔法使いの一人が、他の魔法使いたちへ手招きをする。
私は魔法使いたちに捕まって、暗い橋の下で草むらに投げ出された。
「ここなら暗いし、夜は人も来ねぇだろ……楽しめそうだな」
悪い魔法使いたちは、三人がかりで私を地面に押さえつけて、下卑た笑みを向けてくる。
「前からヤりたかったんだよなぁーこいつ。可愛いのに頭おかしいとかいわれて、女子にハブられてるし、親もいねぇらしいし……チクられることは、ねぇよな?」
「ビビってんじゃねーよ。写真撮って脅せば、気ぃ弱そうだし、誰にもいえやしねぇって。ほら、早く脱がすぞ」
魔法使いたちの手が、私の着ている制服へと伸びてくる。
助けて。
早く助けて。
今日、現れるはずでしょう?
私の、王子様――
そう願ったとたん、魔法使いたちの悲鳴が聞こえた。
あぁ――やっときてくれた。
ずっと待ってた、私の、運命の王子様。
その男は、王冠をかぶってもいなければ、白馬にも乗っていない。
ただ、私を虐めた悪い魔法使いたちの血で、たくさん汚れていた。
手には、たった一本のナイフ。
やっぱり王子様は、優しいだけじゃなくて、強いんだ。格好いい。
それなのに、王子様は私のことを不安そうな顔で見下ろしている。
私はそんな王子様に向かって、両手を差し出し、優しく微笑みかけた。
「会いたかった……私の王子様……」
あぁ――やっぱり魔法使いは、姫を王子のもとへ導くものなのね。